令和3年度 日本視覚障害者団体連合 陳情報告書 【目次】 01 厚生労働省(障害福祉関係) 1ページ 02 厚生労働省(職業関係) 33ページ 03 人事院 44ページ 04 文部科学省 50ページ 05 国土交通省 58ページ 06 警察庁 68ページ 07 経済産業省 75ページ 08 デジタル庁 82ページ 09 金融庁 88ページ 10 消費者庁 94ページ 11 内閣府 98ページ 12 総務省 100ページ 1ページ 01 厚生労働省(障害福祉関係) 1.日時  令和3年8月30日(月) 9時30分~11時00分 2.場所  オンライン、一部書面回答 3.出席者 (1)日本視覚障害者団体連合                      会長  竹下 義樹                    常務理事  橋井 正喜                  総合相談室長  工藤 正一                    事業部長  逢坂 忠                    情報部長  吉泉 豊晴                     事務局  木村 幸平                     事務局  佐藤 絵里 (2)厚生労働省  社会・援護局障害保健福祉部   障害福祉課    訪問サービス係           係長  有川 智基   障害福祉課地域生活支援推進室    地域移行支援係               村松 拓也   企画課自立支援振興室    障害者支援機器係          係長  田中 匡    地域生活支援係               富澤 元嘉    情報・意思疎通支援係            礒部 祐亮    障害者支援機器係              坂本 和香  老健局   高齢者支援課    予算係               係長  宮本 和也  保険局   医療課    先進・再生医療迅速評価専門官  伊藤 宗洋 4.陳情項目、回答、意見  本項はオンラインで実施した陳情において、厚生労働省の担当者からの回答、回答に対する意見等を掲載する。 【外出保障】 (1)通学において同行援護の利用ができるようにする、あるいは、通学において利用できる新たな福祉制度を新設すること。 (障害福祉課 有川)  この要望については、障害者差別解消法の施行に伴う教育分野における合理的配慮の提供と、福祉分野における各種サービスの提供との役割分担をどうするかという課題が存在している。例えば、福祉分野であれば、地域生活支援事業「重度訪問介護利用者の大学等の修学支援事業」により、重度訪問介護が対象となる大学生への支援を行っている。ただ、この事業は、一般的な同行援護の利用者や小中高の学生は対象外となり、小中高の学生については教育分野で支援を行うものと承知している。そのため、この要望については、文部科学省と連携しながら課題解決に向けて検討を進めていきたい。 (竹下会長)  ここ数年、雇用と福祉の連携をテーマに各種検討会が設けられ、様々な課題が議論された結果、障害者に対する通勤支援は大きく前進したと感じている。このような連携による施策の進め方を見ると、教育行政と福祉行政がしっかりと連携する必要があるのではないかと感じてしまう。国は、行政の壁や制度の壁を取り除くことをテーマの1つに掲げている。そのためか、指摘した雇用と福祉の連携の場でも教育関係者が入り、教育に関わる部分の一部は議論されていた。このような背景がある中で、なぜ通学の支援の検討が進まないのだろうか。今回の回答では、厚生労働省と文部科学省で責任の押し付け合いをしているようにしか聞こえない。他の検討では教育との連携が行われているだけに、なぜ教育と福祉が連携できないのかを説明してほしい。  また、視覚障害者の通学は、あくまでも視覚障害者の移動保障の観点から考えるべきではないのだろうか。通学で同行援護が利用できないことは根本的におかしいと思う。この点についても詳しく説明してほしい。 (障害福祉課 有川)  通学時の移動の支援が自宅に付随することなのか、または学校に付随することなのかを考えると、厚生労働省としては「学校に通学してもらうための支援」と判断している。ただ、厚生労働省も文部科学省のどちらも、ご指摘の通学の支援に関しては課題意識をもっており、全ての要望をすぐに解決することはできないが、徐々に解決していきたいと考えている。先に説明した「重度訪問介護利用者の大学等の修学支援事業」がその1つになっている。視覚障害者の通学の支援の問題を後回しにするつもりはないことは理解してほしい。 (竹下会長)  現在、山口県のとある盲学校に通う生徒が通学時に交通事故に遭い、加害者に対して逸失利益を求める裁判が進行しているように、視覚障害者の通学時の事故はかなり多い。私自身も、通学時にバスに接触したことがある。まず、視覚障害者が一人で歩くことは危険を伴うことであることを理解してほしい。そして、文部科学省とも協議を進め、両者で検討するための場を作ってほしい。 (工藤室長)  全国の自治体の中では、地域生活支援事業の移動支援事業で通学の支援を行っている所がある。かつては200自治体程度が移動支援事業で通学の支援を行っていたと聞いており、やはり通学に関する移動支援は一定のニーズがあると思われる。  ちなみに、今現在、移動支援事業で通学の支援を行っている自治体の数はどのくらいなのだろうか。厚生労働省で実施数を把握しているのであれば、教えてほしい。 (自立支援振興室 富澤)  平成25年度の調査では、全国の1,733自治体の中で移動支援事業を実施しているのは1,685自治体だった。そのうち、通学にかかる利用を認めているのは993自治体で、要件の設定がない自治体は117自治体、要件の設定がある自治体は836自治体になる。 (竹下会長)  回答は平成25年の調査結果とのことだが、今の実態とは少し違うと思う。まず、同行援護が始まったのは平成23年からなので、回答の数字は同行援護の開始直後の結果と言える。そして、同行援護が開始して10年が経過した現在、同行援護が視覚障害者の移動支援の中心となり、移動支援事業の利用状況はだいぶ変わってきていると思う。例えば、同行援護ではできないことを移動支援事業で補うような運用もされており、その1つが通学での利用だ。ぜひ、今の実態を踏まえた調査を実施してほしい。 (2)同行援護事業所等において福祉有償運送サービスを取り入れる等、ガイドヘルパーの運転する車両が利用可能となる制度を確立させること。そして、同行援護従業者が運転して移動する時間や待機時間を報酬算定の対象に加えるよう制度を改善すること。 (障害福祉課 有川)  障害福祉サービスの提供時に利用者を車両で移動する時間は、道路交通法に定める安全運転を行う時間となる。そのため、運転中のガイドヘルパーは利用者に対する支援ができないと想定されることから、同行援護の報酬上の評価はできないと考えている。厚生労働省としては、このようなことから、車両での移動は福祉有償運送での輸送を取り入れることを薦めている。  なお、重度訪問介護の利用者に対して、車両が停車・駐車した状態で緊急的に介護を行うことを令和3年4月より報酬対象に加えている。他の障害者の車両を利用した移動については、関係者の意見を伺いながら、引き続き、検討を進めていきたいと考えている。 (竹下会長)  まず、視覚障害者の移動に関する福祉有償運送は、全国的には広まっていないと思う。広まらない背景には、地元のタクシー業界との折り合いがつかない等、様々な理由があるようだが、我々自身、なぜ福祉有償運送が全国で広まらないのかが分からない。厚生労働省でその原因等を調べることはできないのだろうか。  また、最近は自動運転の車の開発が進んでいるが、仮に自動運転の車に乗ったガイドヘルパーがハンドルを持たない状態で支援を行った場合は、報酬の対象になるのだろうか。 (障害福祉課 有川)  福祉有償運送の制度は国土交通省の管轄になるため、厚生労働省では原因等を把握していない。ただ、国土交通省において原因等を調べることはできるかもしれない。  自動運転の車に乗車した際の介助については、国としてこのようなことを検討したことがないので、この場で可否をお伝えすることはできない。現時点では、介助者と別の者が車を運転していて、介助者が常に利用者への介護等ができるのであれば報酬の対象となることから、自動運転においてもこのような状況になるのであれば、検討の余地はあるのかもしれない。 (竹下会長)  ここ数年、全国的にタンデム自転車が公道等を走れるようになってきた。我々の知る限りでは、条例改正等を経て、47都道府県の中で44都道府県が利用可能になったと聞いている。その中で、全国から「ガイドヘルパーが運転するタンデム自転車に利用者が乗車して移動することは可能かどうか」との質問が多く寄せられている。詳しく調べると、自治体によってはこの利用方法を認めない所もあるようだ。厚生労働省としては、タンデム自転車を利用しての同行援護は利用可能と考えているのかを教えてほしい。  また、自動車を利用した同行援護を認めないことの背景には、いわゆる白タクの問題があると理解している。今まで、厚生労働省からは「ガイドヘルパーが運転する車に対して同行援護の報酬という形でお金を払うことは旅客輸送に該当するため、同行援護で車を利用するのは認めない」との回答もあり、一部の自治体もこのことを説明している。ただ、タンデム自転車であれば、この問題には該当しないと思う。この点を踏まえて、タンデム自転車での同行援護が可能となるよう、検討してほしい。 (障害福祉課 有川)  確かにタンデム自転車であれば、旅客輸送に該当しないかもしれない。今後、全国の自治体の判断状況を見ながら、同行援護でタンデム自転車が利用できるかどうかを検討していきたい。 (3)同行援護の報酬は、利用時間に応じて逓減されることのない制度とすること。 (障害福祉課 有川)  障害福祉サービスの報酬体系については、人件費にとどまらず、事業者が運営するための様々な経費を総合的に勘案して報酬額を設定している。そのため、サービスの時間数に応じた報酬額は、人件費はその時間数に応じたものになるものの、事業所の管理コストは必ずしも時間数に応じて発生するものではないため、時間数が長くなると報酬が逓減する仕組みとなっている。なお、こういった報酬体系が現状と見合わないものであるのであれば、全国の状況や関係者の意見を踏まえながら検討を行う。 (竹下会長)  我々も同行援護の報酬を一律にするのは難しいと思っているが、今の逓減の割合は極端すぎると感じている。今の同行援護における報酬は、長時間になればなるほど報酬が下がりすぎていて、事業所にとっては不利な報酬体系となっている。我々は、同行援護の報酬は事業所にとって合理性のあるものにすべきだと思っている。そのためには、どのような報酬が合理的なのかを調査研究事業等によって整理することが必要ではないだろうか。その中では、各地域の最低賃金の動きも考慮する必要がある。 (障害福祉課 有川)  厚生労働省としても、報酬の総額を見た時にその事業所がしっかりと運営できる報酬であることが大切だと思っている。時間数に応じて報酬が逓減する仕組み自体を見直すのは相当な議論が必要になるが、報酬の単価については、全国の実情等を踏まえながら、定期的に報酬改定を行っていきたい。 (竹下会長)  知的障害者や精神障害者の行動の支援を行う行動援護にも報酬を逓減する仕組みが設けられている。ただし、行動援護はもともと短時間利用を想定していないことから5~8時間の長時間利用を想定した逓減になっており、事業所側の運営が成り立っている。ただ、同行援護は2~3時間ぐらいの利用が多く、長時間の利用は一定数の利用はあるがそこまで多くはない。長時間の利用がニーズとしてある以上、厚生労働省には実際の同行援護の利用実態を踏まえた報酬の改定を検討してほしい。 (4)新型コロナウイルス感染拡大により非常に大きな影響を受けている同行援護事業所に対して財政的な支援を行うこと。 (障害福祉課 有川)  新型コロナウイルス感染症の影響により、事業に支障が出ている事業所や支援者を支援することは重要なことと考えている。そのため、令和2年5月以降に全国の自治体等に発出した事務連絡等において、人員確保や人員配置、報酬加算の弾力的な運用等を認める旨の見解を示し、事業所が円滑に事業を実施し、報酬を受け取れるようにしている。また、同行援護については、全国の利用実態を勘案し、ガイドヘルパーによる買い物代行を認める等の事務連絡を行っている。  なお、障害福祉サービスの範囲ではないが、独立行政法人福祉医療機構の無担保の融資や、雇用調整助成金において新型コロナウイルス感染症の特例措置等の支援策も実施している。  このような施策を通して、コロナ禍において地域の事業所が安定的に障害福祉サービスを実施できるようにしていきたい。 (竹下会長)  同行援護の事業所の場合、ガイドヘルパーは登録制となることが多い。今回の新型コロナウイルス感染症に関する各種措置は、このようなガイドヘルパーにも適用されるのだろうか。例えば、コロナ禍では、利用者が同行援護の利用を控える傾向にあるため、比例して事業所からガイドヘルパーへの仕事の依頼が減っている。そうなると、ガイドヘルパーは事実上休業という形になることがある。このような場合にも国等の支援は適用となるのだろうか。 (障害福祉課 有川)  同行援護のガイドヘルパーのみを支援する施策はないが、事務連絡において示した弾力的な運用の中で、予め計画していたサービスが新型コロナウイルス感染症に関する何らかの事情でサービス時間が短くなった場合は、事前に支援員等を用意していた点を考慮し、計画していたサービス時間で報酬を査定する旨を示している。このことを踏まえると、結果的に利用に至らなかった理由が整理できれば、報酬算定しうるものと考えている。 (竹下会長)  そうなると、自治体側の判断により報酬を出すか出さないかが決まることになるのか。 (障害福祉課 有川)  最終的に報酬を査定するのは当該市町村になるので、自治体側で判断する形になる。厚生労働省としては、事業所がしっかりと衛生対策を行いながらも新型コロナウイルス感染症の影響により事業に支障が出てしまうのであれば、障害福祉サービスの弾力的な運用を行ってほしい旨を自治体にお願いしている。 (竹下会長)  コロナ禍における同行援護の利用控えの一例を紹介すると、散歩をするために定期的に同行援護を利用していた人は、コロナ禍においては外出を控えるようになったため、このような同行援護の依頼は無くなってしまった。このような利用控えが重なり、ある大手の同行援護の事業所では報酬ベースで年間で4,000~5,000万円が減ったと聞いている。この金額からどのくらいの時間数が減ったのかは分からないが、その事業所のある自治体からは何も補助や支援はなかったとも聞いている。  この中で気になるのが、多くの自治体は登録制のガイドヘルパーを雇用調整助成金の対象と見なさい判断をしている点だ。また、同行援護事業所の事業主の多くは、事業主でありながらガイドヘルパーの実務を担っている。こういった事業主も対象ではない。回答にあった事業所への支援は承知しているが、重要なのは同行援護の現場で働いている者に対する支援だと思う。なんとかして仕事ができないガイドヘルパーや事業所を支援することはできないのだろうか。 (障害福祉課 有川)  雇用調整助成金になると労働サイドの管轄になるので、こちらからは明確な回答ができない。ただ、労働サイドだけの問題ではないと思うので、要望内容は真摯に受け止めたい。 (竹下会長)  同行援護の事業所から新型コロナウイルス感染症の感染者が出た場合、我々は労災になると考えている。厚生労働省としては、この場合は労災になると考えているか。   (障害福祉課 有川)  労災についても労働サイドの管轄になるので、こちらからは明確な回答ができない。 (竹下会長)  この質問は、新型コロナウイルス感染症に感染した者が労災扱いになることを知った上で質問している。労働の場において、労働に関する範囲で新型コロナウイルス感染症に感染した場合は、労働者が労災の対象になることを厚生労働省は名言している。また、同行援護事業所のガイドヘルパーが労働基準法の対象になることも厚生労働省は以前より明言している。  ただ、現実には登録型のガイドヘルパーは労災の対象と見なされないことが多い。正規雇用で働いているガイドヘルパーは当然ながら労災の対象となるが、同じ仕事をしているのにこういった判断の差があるのはおかしいと思う。 (工藤室長)  新型コロナウイルス感染症における国の各種支援を見ていると、徐々にフリーランスの人への支援も拡充している。ガイドヘルパーもある意味でフリーランスの人なので、支援の対象にすべきだと思う。ぜひ、厚生労働省の労働サイドと協議し、打開策を見つけてほしい。 (竹下会長)  全国のガイドヘルパーは、コロナ禍で感染のリスクを負いながら仕事をしている。ただ、ガイドヘルパーに対する支援がないことにより、ガイドヘルパーの仕事を辞めてしまう者も増えている。これは、事業所にとっても、利用者にとっても痛手だ。この要望には、同行援護の事業を全国で安定的に実施する上で重要な問題が含まれている。この点はしっかりと認識してほしい。 (5)全国の自治体において歩行訓練が受けられる体制を構築するよう自治体に指導すること。その際は、全国各地で歩行訓練を受けやすくするため、各地の視覚障害当事者団体に歩行訓練士を配置する等の基準を設けること。 (地域生活支援推進室 村松)  まず、厚生労働省としては、視覚障害者が安心して歩行訓練を受けられるようにすることは極めて重要なことと認識している。そのため、従来は身体障害者を対象とした自立訓練の機能訓練のみで歩行訓練を実施していたが、平成30年度障害福祉サービス報酬改定において要件の見直しを行い、自立訓練の生活訓練で歩行訓練を実施することを可能とした。また、自宅を訪問して行う歩行訓練については通常よりも高い報酬設定にした。しかし、平成30年度の改定以降、生活訓練において歩行訓練がほとんど実施されていないこと、視覚障害者への訪問訓練が活発に実施されていないこと等の課題があり、引き続き改善を行う必要性があると考えている。今後は、これらの課題を整理する等の検討を行っていきたい。  また、歩行訓練士の配置基準を設けることについては、歩行訓練士の養成に関わる事業を引き続き実施することに加え、各自治体での実施例を周知することにより、歩行訓練士の養成の拡大に努めたい。 (逢坂部長)  近年、中途で高齢の視覚障害者が白杖を購入するケースが増えている。ただ、こういった者が歩行訓練を受けずに白杖を使うのは危ないので、購入者の周りで歩行訓練が受けられる場所を探してみても、近くで歩行訓練を受けられる所はほとんどない。つまり、歩行訓練が受けられる場所は拡大していないと言える。回答のような取り組みも必要かもしれないが、自治体等も巻き込んだ取り組みを行わなくては、歩行訓練が行える場所が広まらないのではないか。 (竹下会長)  要望で示した視覚障害の当事者団体に歩行訓練士を配置することは、非常に価値があることだと思っている。ただ、これらの団体にとって、自立訓練の施設を設置することは非常に壁が高いと言われている。そして、現状では、これらの団体に併設する点字図書館等の職員として歩行訓練士を雇う等の様々な工夫を行うことで、何とかして地域での歩行訓練を実施している。歩行訓練を全国に広めるためには、訓練を実施する施設を設置しやすくすることも大切だと思う。  また、白杖を購入して歩行訓練を受けずに一人歩きをしたことで事故に遭う者が近年急増している。特に、駅ホームからの転落事故は各地域で増えている。この駅ホームの転落事故を防止するには、ホームドア等の設置といったハード面の推進、駅員からの声掛け等のソフト面の推進、そして、視覚障害者自身が安全対策を行うことが重要で、最後の安全対策の中で最も重要なのは歩行訓練だと思う。この3点は国土交通省や鉄道事業者等に強く要望しているが、そもそも歩行訓練を受けられる機会や場所がなければ、この要望が実現しない。駅ホームの安全対策ではあるが、厚生労働省にも関係していることを認識してほしい。 (工藤室長)  眼科と歩行訓練が繋がっていることも重要だと思う。病気等で目の状態が悪化し、視覚障害になった者が最初に関わるのは眼科になる。この眼科で白杖の給付と歩行訓練がセットで紹介できれば、その視覚障害者にとっては有益になるだろう。そのためには、歩行訓練士を全国で増やし、どこでも歩行訓練が受けられるようになることが重要だと思う。 (橋井常務理事)  同行援護のガイドヘルパーは、歩行訓練を受けたことがなく、一人歩きがほとんどできない視覚障害者を誘導することがある。これはその視覚障害者にも、ガイドヘルパーにとっても危険を伴う誘導となる。ガイドヘルパーの安全を守ることも大切なので、同行援護を利用する視覚障害者は歩行訓練を受けるべきだと思う。  また、視覚障害の当事者団体の職員等を歩行訓練士の養成に出そうとしても、研修期間が長かったり、場所が限られていたりして、団体側が簡単に職員等を研修に出せないことが多い。各団体とも、職員数や資金が乏しい中で事業を運営しているので、職員等を歩行訓練士の養成に出している期間は、その団体に補助金を出す等の工夫ができないだろうか。 【地域生活支援事業】 (6)障害者総合支援法の地域生活支援事業について、市町村の財源負担割合が25/100以上とならないよう国、都道府県は財源を確保すること。 (自立支援振興室 富澤)  地域生活支援事業は、障害児者が自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう、各自治体が地域の特性や利用者の状況に応じ、多様な事業を組み合せ、柔軟な形態により事業を効果的・効率的に実施するものとしている。  この事業の事業費は、国が事業費の1/2以内を補助できると示しているが、現状では非常に厳しい財政状況であることから、多くの自治体からは国庫補助の充実を求める声が届いている。そのような中、令和3年度の予算では、障害者の地域生活の支援の充実を図るため、前年度予算から8億円を増やし、約513億円を計上したところである。引き続き、各自治体における地域の特性や利用者の状況に応じた支援が実施されるよう、国として予算化していきたいと考えている。 (竹下会長)  各地域の代表者が自治体と障害福祉サービス関連の交渉を行う中で、自治体側から、国からの財政面の厳しさを元に利用時間等の削減を示されることがある。このような説明を受けたら、視覚障害者側は何も言えない。そこで、このような要望を出している。自治体の財政を充実させることは、自分たちが受ける障害福祉サービスの充実に繋がるので、安定的な財源を確保してほしい。 (7)視覚障害者に対してICTの利活用を支援するボランティアの養成事業を、地域生活支援事業に組み入れること。 (自立支援振興室 坂本)  まず、障害者に対するICTの支援については、地域生活支援促進事業の1つである障害者ICTサポート総合推進事業が該当する。この事業において、サピエ等のインターネットを通じたサービスやICT機器の操作を指導する支援者の養成、障害者に対するICT機器の貸し出し、利用にかかる相談等を行うICTサポートセンターの設置・運営等を行っている。この事業の中では、例えば、視覚障害者の地域生活を支援するため、地域広報誌やイベント案内等の地域情報を音声や点字等の利用しやすい媒体に加工し、サピエにアップロードする事業等を行っている。  引き続き、障害者ICTサポート総合推進事業が実施主体である都道府県において積極的に取り組まれるよう、障害保健福祉関係主管課長会議等の場において周知していきたい。 (竹下会長)  回答の障害者ICTサポート総合推進事業は、都道府県及び政令指定都市、中核市までの事業と認識している。つまり、地域の市町村レベルではほとんど実施されていないと思っている。厚生労働省は現状の実施率等を把握しているのか。 (自立支援振興室 田中)  都道府県での直近の実施データは、ICTサポートセンターの設置している所は28団体、パソコンボランティアの派遣を実施している所は32団体、サピエ等を活用したアップロード事業を行っている所は8団体となっている。政令指定都市、中核市になると、この結果よりもさらに実施数が少ない。中核市では1割程度の実施率となっている。 (竹下会長)  回答の結果を含め、障害者へのICT支援は、やはり自治体によって温度差があると思う。これこそが自治体がこの事業を実施しない原因ではないだろうか。例えば、読書バリアフリー法の関係で、都道府県ごとに基本計画を作るよう厚生労働省からお願いをしているはずだが、視覚障害者にとって価値のある試みが含まれた基本計画を作った都道府県はごく一部しかない。つまり、自治体は国の意図や思いを理解せず、結果的に何も動かないことが多い。  読書バリアフリー法の基本計画もそうだが、国が作った制度は、厚生労働省から全国の自治体に対してしっかりと実施するよう指示すべきではないか。 (自立支援振興室 田中)  厚生労働省としても、全国の自治体等が積極的に事業を実施することが重要だと思っている。引き続き、自治体側に頑張ってもらうよう、働きかけていきたい。 (吉泉部長)  国は行政手続きのデジタル化を進めているが、多くの視覚障害者はこのデジタル化に対応できず、デジタル化の流れに取り残されている。一方で、地方ほど、視覚障害者にICT関連の支援ができる人材が少ないことから、この要望が全国から出ている。ぜひ、全国の視覚障害者がデジタル化の流れに取り残されないよう、全国で支援者の養成を進めてほしい。 (竹下会長)  9月にデジタル庁が開設されるが、ICTに関する施策をデジタル庁が府省庁の垣根を超え、どこまで横断的に実施できるのかが不明確な部分がある。そうなると、障害者ICTサポート総合推進事業のような事業は、厚生労働省の中でしっかりと進めることも大切だと思う。特に、このICTに関する内容は、読書バリアフリー法とも連動する部分が多い。そのため、厚生労働省が主軸となり、関係府省庁と連携しながら進めていくことも大切だ。ぜひ、厚生労働省としての障害者向けICT支援を充実させてほしい。 (8)日常生活用具としての視覚障害者用ポータブルレコーダーは、等級による支給制限を撤廃すること。 (9)耐用年数の期間内であってもソフト更新ができない等の理由からその機能を発揮することができない機器にあっては、新製品の買い替えを特例的に認めること。 (自立支援振興室 坂本)  障害者が地域で安心して生活するためには、地域からのニーズを踏まえながら、地域の自治体が主体となって施策の推進を行うことが大切だと考えている。このような観点から日常生活用具給付等事業は、実施主体である市町村が地域の実情や利用者の状況を踏まえ、事業を柔軟に実施していると承知している。このような事業の特性を踏まえ、厚生労働省としては、事業の要件等のみを定め、実施主体である市町村が地域の実情やニーズに応じて、具体的な種目、対象者、対応年数、基準額、利用者負担等の要件を定めている。なお、要望の新製品の買い替えについては、利用者が日常生活を送るために新製品でなくてはならない理由やその他の事情を踏まえ、市町村が個別に判断すべきと考えている。  引き続き、各市町村が当事者のニーズや地域の実情に応じて適切な給付が行われるよう、障害保健福祉関係主管課長会議等の場を活用し、市町村に周知していきたい。 (竹下会長)  回答では「各市町村は、当事者のニーズや地域の実情に応じて判断する」と説明したが、市町村は何を基準に判断しているのか。厚生労働省の認識を教えてほしい。 (自立支援振興室 田中)  基準の1つは平成18年以前に国で定めた参考例だと認識している。ただ、厚生労働省としても、市町村独自で判断基準を設けるべきと考えており、その旨は障害保健福祉関係主管課長会議等でお願いしている。 (竹下会長)  その参考例だけではない。例えば、厚生労働省からの委託事業でテクノエイド協会が平成20年3月に発行した「補装具・日常生活用具給付等ガイドブック」は、今も利用され続けている。市町村の担当者は、独自の判断をすることで何かトラブルになった時の責任問題を避けるため、このガイドブックを根拠に利用者に説明している。一方で、テクノエイド協会の関係者は「このガイドブックの改定は今のところ予定していない」と話している。つまり、このガイドブックがあることで、地域のニーズは考慮されず、古い情報が優先されてしまい、正しい日常生活用具の給付が行われていない状況が生まれている。厚生労働省はこのような実態を理解しているのだろうか。まずはガイドブックの改正を行うべきではないか。  また、日常生活用具の給付においては、読書バリアフリー法ができたことを追い風にすべきだと思う。全盲や弱視を問わず、全ての視覚障害者が本を読めるようにするため、もっと日常生活用具の制度を活用すべきだと思う。そのためにも、自治体が独自に動けるための事務連絡等を発出してほしい。 【新型コロナウイルス感染拡大に伴う対応】 (10)視覚障害者が新型コロナウイルス感染症による検査や入院が必要になった際、安心して適切な移送・看護等が受けられる体制を作ること。 (障害福祉課 有川)  障害児者が新型コロナウイルス感染症に感染したことにより入院等が必要になった際の配慮等は、令和2年6月19日に事務連絡「今後を見据えた新型コロナウイルス感染症の医療提供体制整備について」により、都道府県に対して障害者それぞれの障害特性等を踏まえた医療機関の受け入れ態勢等の整備をお願いしている。その中で、意思疎通支援が必要な障害者に対しては、安全対策を行いつつ、的確に支援者等の派遣が受けられるようにすることをお願いしている。 (竹下会長)  まず、要望書では「検査や入院」としているが、昨今の医療体制を踏まえると「在宅医療」も含めた要望であることを理解してほしい。  そして、この要望の背景を簡単に説明する。視覚障害者で新型コロナウイルス感染症に感染し、入院して治療を受けた者は何名かいる。これらの者からは色々な報告や相談があり、例えば、入院時に移動や意思疎通の支援が受けられなかったとの報告があった。一方で、今の医療体制がひっ迫していることを踏まえると、医療体制側から視覚障害者への支援が難しいことも理解している。このような背景があり、多くの視覚障害者は、自身が入院や在宅医療を受けることになった場合、しっかりと支援が受けられるかどうか不安になっている者が多い。 (工藤室長)  我々の相談窓口には、全国から新型コロナウイルス感染症の治療や入院に関する様々な相談が寄せられていて、どの相談も深刻なものが多い。特に、目の見える家族等が近くにいない視覚障害者は、保健所へ電話するだけでも苦労している。こういった視覚障害者が在宅医療を受けることは、体調が悪化した時のことを考えると本人の不安は相当なもので、やはり自治体や医療関係者の目の届くところ、つまり入院等の措置を優先的に行うべきだと思う。 (吉泉部長)  視覚障害者の移動や意思疎通の支援に関する様々な事務連絡が、国から自治体や医療機関宛に出されていることは承知している。ただ、結果的に支援に結びついていないことの方が多いような気がする。この要望とは少し外れた事例になるが、地方に住む視覚障害者が「新型コロナウイルス感染症生活困窮者自立支援金」の申請をするために自治体の窓口等に何度も訪れる必要があり、同行援護を利用して移動しようと考えたら、コロナ禍でなかなかガイドヘルパーの予約ができず、自治体に行くのが大変だったとの相談が寄せられたことがある。生活に困っているから自治体の窓口に行くのに、結果的に移動の支援が受けられなかった事例とも言える。国や全国の自治体は、こういった困っている視覚障害者が全国にいることを念頭に、コロナ禍における総合的な支援の拡充を実現してほしい。 【高齢者問題】 (11)盲養護老人ホーム入所の際、所得があっても生活環境要件及び身体要件を重視し、視覚障害者の希望に即して入所できるよう経済要件を緩和すること。 (高齢者支援課 宮本)  介護老人ホームの入所基準については、老人福祉法に基づき「65歳以上の者であって、環境上の理由により自宅において介護を受けることが困難な者」を対象にしている。このことについては従前より様々な意見があることは承知しているが、現時点でこの要件を緩和することは困難と考えている。  一方で、養護老人ホームについては、令和元年7月に定員の20%の範囲内で契約入所を可能とする通知を発出しており、高齢者または障害者が契約入所するにあたっての経済的な要件は設けていない。また、本通知において、対象者の例示として一定程度の所得がある者を明示している。今後も契約入所の普及・促進を目指し、障害保健福祉関係主管課長会議等の場において適切な措置や円滑な実施等を自治体に周知していく。 (竹下会長)  所得要件の緩和が難しい理由を教えてほしい。 (高齢者支援課 宮本)  一般財源化される措置においては措置控えと言われるような動きがあり、やはり経済的な部分は検討材料になってしまう。 (竹下会長)  それでは、養護老人ホームは低所得政策になると考えてよいのか。 (高齢者支援課 宮本)  老人福祉法第11条では「六十五歳以上の者であつて、環境上の理由及び経済的理由(政令で定めるものに限る。)により居宅において養護を受けることが困難なものを」と示しており、ここで経済的理由を表現している。現行制度上では、そのような考えは織り込まれているものと承知している。 (竹下会長)  では、法律の「困難な」という部分は、どのような基準で困難と認定しているのかを教えてほしい。 (高齢者支援課 宮本)  具体的な内容は同法の政令である老人福祉法施行令第6条で定めており、生活保護の者や住民税の所得割を受けている者等を対象とすることを定めている。また、災害その他の事情により生活の状態が困窮していると認められた者も対象となる。 (竹下会長)  その説明で例示された者は、まさに「低所得者」になるのではないか。今まで、厚生労働省から受けた説明では、障害者政策の大半は低所得対策と聞いている。その中では、生活保護基準や地方税の非課税等を基準としてきた。そうなると、この内容だけ「低所得対策ではない」とするのであれば、所得要件を高く設定しても問題がないと感じる。  ちなみに、他の高齢者対策の所得制限と要望の入所基準の所得制限は同じ考えになっているのか。 (高齢者支援課 宮本)  介護保険の場合は所得に応じた負担となっている。 (竹下会長)  最後に、説明にあった政令の見直しを今後行う予定はあるのか。また、令和元年度より「定員の20%の範囲内で契約入所を可能とする」との回答だが、現時点での利用率は把握しているのか。統計を取っていないのであれば、今後は利用率の動きを注視してほしい。 (高齢者支援課 宮本)  まず、ここ数十年、政令の見直しは行われていない。また、契約入所のことはまだ始まったばかりになるので、現時点での利用率は明確には整理できていない。ただ、令和3年度に調査研究事業を実施する予定になっているので、そこで整理したいと考えている。 【意思疎通支援事業】 (12)代筆・代読支援は自立支援給付とすること。なお、個別給付事業にするまでは、地域生活支援事業の必須事業に位置付け、地域格差なくサービスを受けられるよう、国が全国の自治体に強く働きかけること。 (13)視覚障害者を対象とする意思疎通支援事業としての「代筆・代読支援」は、同行援護事業と連続して自宅でも利用できるようにすること。 (自立支援振興室 礒部)  要望は視覚障害者にとって重要なものであると認識している。しかし、制度改正に関わる内容が含まれていることから、専門家や障害者部会等での議論を行いながら、慎重に検討を進めるべきと考えている。  なお、代筆・代読に関する支援は、市町村が実施する地域生活支援事業「意思疎通支援事業」の中に含まれており、各自治体の創意工夫の基、支援が実施されるものと承知している。厚生労働省としては、引き続き、同事業の開始を自治体に促すため、障害保健福祉関係主管課長会議等の場において周知する等の対応に努める。 (竹下会長)  ここ最近、障害者支援の中で「シームレスな支援」という観点が重要になってきている。陳情項目(13)は、この観点からの要望であることを理解してほしい。例えば、現在の同行援護の制度では、外出時の支援は同行援護で対応できるが、居宅内の支援は同行援護では対応できないため、もし、居宅内で代筆・代読の支援を受けようと思ったら、同行援護とは別のサービス、つまり意思疎通支援事業等に切り替えないといけない。そこで今回の要望の「連続して」という部分が重要になってくる。利用者としては、例えば、同行援護を利用して外で買い物をした後、家に到着し、買ったものに記入が必要であれば、家の中でその同行援護のガイドヘルパーに代筆・代読してもらえることが1番手間がなく、安心だと思っている。ただ、現在の制度では、別の支援者に切り替えないといけない可能性が高い。厚生労働省においては、利用者の利便性を踏まえた代筆・代読支援が広まるよう、全国の自治体に対して強く働きかけてほしい。 (工藤室長)  同行援護における支援の連続性を考えた時、同行援護を利用してスーパー等に買い物に行き、その後、家について冷蔵庫にしまう際、視覚障害者では上手く仕分けができないので、この仕分けを手伝ってほしいというニーズもある。この居宅内の仕分けの支援は居宅介護になるのかもしれないが、こういった部分も改善してほしい。 【ロービジョンケアに関する診療報酬改定】 (14)平成24年4月から実施されている「ロービジョン検査判断料」については、算定できる施設基準が、現行は視覚障害者用補装具適合判定医師研修会を終了した常勤医師とされているが、これを緩和し、非常勤医師でも可能とすること。 (医療課 伊藤)  ロービジョン検査判断料の設置基準については、診療の質を担保する観点から、厚生労働省が主催する視覚障害者用補装具適合判定医師研修会を終了した常勤で1年以上の眼科の医師を配置の要件としている。  また、医療技術に関する診療報酬に関しては、学会等から提出された要望を医療技術評価分科会において検討し、同分科会の意見を踏まえて技術の導入や評価の見直しを行っている。要望のロービジョン検査判断料の見直しについても、同様の流れによって検討していきたいと考えている。 (工藤室長)  この要望は、中途の視覚障害者にとって非常に大切なことだと考えている。ロービジョン検査判断料があることで、眼科等の診療でロービジョンケアが進み、中途の視覚障害者の社会復帰に繋げることができる。ぜひ、前向きな見直しを行ってほしい。例えば、補聴器は非常勤の医師でもよいとされているので、こういった事例を参考にするのはどうだろうか。  また、この研修会を終了した医師は何人いるのだろうか。分かれば教えてほしい。 (医療課 伊藤)  厚生労働省として正確な人数等は把握できていない。ただ、終了した医師の数、要件を満たした施設の数は毎年増加していることは把握している。なお、診療報酬の申請件数は、令和2年5月の実績は1,084件になるので、1年間では1万3,000件程度の実績になっている。検査料自体は250点になるので、この数を計算すると年間で325万点、つまり3,250万円程度になる。  また、ご提案いただいた非常勤の医師を活用する等の方法については、診療の質を保つことが重要と考えていることから、学会等からの具体的な意見等を踏まえながら検討していきたい。 (竹下会長)  我々も「質の担保」ということは大切だと考えている。ただ、常勤の医師では質が担保され、非常勤の医師では担保されないという理由が分からない。この点は明確にすべきだと思う。  また、回答の研修会は希望者全員が受講できる体制になっているのかも教えてほしい。 (医療課 伊藤)  まず、常勤・非常勤の違いは、医師がその医療機関に常駐するかどうかで対応力の差が生まれる観点から、その対応力を重視した結果、常勤を要件としている。ただ、常勤・非常勤の違いにより、どのくらいの対応力の差があるのかは分からないので、非常勤でも対応可能とするかどうかは、専門家の意見を聞きながら慎重に検討していきたいと考えている。  そして、研修会の受講状況や内容については、担当者がいないため、明確な数字等は答えられない。ただ、厚生労働省としては、受講する医師達の状況やニーズが掴み切れていない部分があると感じており、どの担当も研修会の受講状況等を注視している。  ちなみに、研修会の受講状況について何かご存知なことがあれば教えていただけないだろうか。 (工藤室長)  現場の医師等からは「研修会が受けにくい」との声をよく聞いている。かつては5日間連続で開催していた時期もあったが、休みをとって参加できる医師は少なく、大きな病院ぐらいしか人を出すことができないだろう。また、全国の各地域で開催した時期もあったが、今は所沢の国立障害者リハビリテーションセンター学院のみで開催されており、地方の受講者は移動が大変だと思う。研修を受ける医師は増えてきたとは思うが、我々としてはまだまだ改善が必要だと思っている。研修会の関係者と意見交換をした際にも「もっと全国の眼科医が研修を受けやすい環境にすべき」との意見を聞いているので、ぜひ、前向きな改善を図ってほしい。 (竹下会長)  視覚障害者にとってこの制度ができたことは極めて重要だと考えている。目の病気を患い視力の低下が進む中で、眼科に通わない視覚障害者はいないだろう。そして、これらの者が円滑に社会復帰し、生活の質を取り戻すために、この制度が機能しているのだと考えている。学会からの意見によって検討を進めるとの回答は承知しているが、視覚障害当事者からも要望があることを理解してほしい。  5.書面回答  本項はオンラインでの陳情の終了以降に、担当課より書面にて回答があったものを掲載する。 【外出保障】 (1)同行援護事業においては利用時間を制限しないこと。仮に、利用時間の上限ないし基準を定める場合でも、通勤時の利用及び自営業者への支援を想定し、現行の月50時間から月70時間に改善すること。 (障害福祉課)  市町村における障害福祉サービスについては、全国一律の利用量上限は設けておりませんが、支給決定を適正かつ公平に行うために、各市区町村において支給決定基準を定め、利用者のニーズや地域の実情に応じて支給の可否、支給量等を決定することとしております。  今後とも、適切な支給決定が行われるよう努めてまいります。 (2)同行援護の利用者の自己負担を廃止するか減額すること。また、同行援護をはじめとする障害福祉サービスの自己負担の算定基準は、さらに細かく区分し、所得の実情に合った負担基準とすること。 (障害福祉課)  同行援護を含め、訪問系サービスの支給決定にあたっては、適正かつ公正な支給決定を行うため、市町村においては、あらかじめ支給決定基準を定めておくことが望ましいこと、支給決定基準の設定にあたっては、国庫負担基準が個々の利用者に対する支給量の上限となるものではないこと、申請のあった障害者等について、障害支援区分のみならず、すべての勘案事項に関する一人ひとりの事情を踏まえて適切に行うことに留意するよう、平成19年に通知で示しており、毎年の障害保健福祉関係主管課長会議の場でも繰り返し周知徹底をしています。  その上で、特に日常生活に支障が生じる恐れがある場合には、個別給付による同行援護のみならず、地域生活支援事業におけるサービスを含め、利用者一人ひとりの事情を踏まえ、例えば個別給付であれば、個別に市町村審査会の意見を聴取する等で、いわゆる「非定型ケース」(※1)として取り扱う等、障害者等が地域において自立した日常生活を営むことができるよう、適切な支給量を決定していただくことを市町村にお願いしているところであり、今後とも様々な機会を捉えて周知してまいります。  また、現在の障害福祉サービスの利用者負担については、所得に応じてひと月あたりの負担限度額を設定しており、利用者の負担が過剰なものとならないようにしているところです。 (※1)「非定型ケース」について  支給決定基準で定められた支給量によらずに支給決定を行う場合のこと。 (3)新型コロナウイルス感染拡大を受けて緊急措置として利用可能となった同行援護の代行依頼が、平時でも利用可能となるよう柔軟な制度運用をすること。 (障害福祉課)  同行援護は、視覚障害者等の外出時において障害者本人の介護等の支援を行うためのサービスであり、障害者との同行を前提とした報酬単価を設定しております。  一方、ヘルパーが単独で本人の代わりに生活必需品の買い物を行う場合は、居宅介護(家事援助)において実施することができます。  現在、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止の必要性に鑑み、居宅介護の支給決定を受けていない同行援護利用者について、ヘルパーが単独で買い物の代行や薬の受け取りの代行等を行っても報酬算定の対象とする臨時的取扱いを行っておりますが、同行援護の適用対象そのものを恒久的に拡大することについては、上記のサービス趣旨を鑑み、慎重な判断が必要であると考えております。 (4)施設利用の際にも同行援護事業が利用できるようにすること。少なくとも、地域生活支援事業としての移動支援を利用できるように、自治体に対し通知すること。 (障害福祉課、自立支援振興室)  施設利用の際には、施設におけるサービスに含まれることから、原則施設側において移動支援を行っていただくべきと考えております。  他方、施設サービスと明確に切り分けることが可能であれば、地域生活支援事業の移動支援事業のサービスの対象となります。なお、この判断は個々の利用者の状況等に応じ、市町村により行われるべきものと考えています。  厚生労働省としましても、移動支援の重要性に鑑み、事業の利用を希望する者の心身の状況や、利用についての意向等を十分に把握した上で、真に必要とする者にサービスが適切に提供されるよう、引き続き障害保健福祉関係主管課長会議の場等を通じて自治体にはお願いしていきたいと考えています。  また、厳しい財政事情ではありますが、移動支援事業に関わらず、地域生活支援事業として、市町村が必要なサービスを提供できるよう、予算の確保を行っていくつもりです。 【地域生活支援事業】 (5)原子力発電所立地の自治体及び周辺自治体において「しゃべる線量計」を日常生活用具給付等事業の給付品目に加えること。 (6)日常生活用具の給付にあたって、音声体温計や音声体重計、音声血圧計等は、同居する者がいる場合も支給対象とすること。 (7)眼球使用困難症候群患者が各種読書器を購入する際、補助できるようにすること。 (自立支援振興室)  地域生活支援事業の中の1つである日常生活用具給付等事業については、実施主体である各市町村がその地域の特性や利用者の状況を踏まえ、柔軟な形態で効果的な事業が実施できる仕組みとなっております。  このような事業の特性を踏まえ、厚生労働省では、告示にて用具の要件、用途及び形状を定め、実施主体である市町村が具体的な種目、対象者等の制度の運用に必要な事項を定めています。  このため、御照会の種目や支給対象については、お住まいの市町村で確認していただく必要があります。  厚生労働省としましては、各市町村が当事者のニーズを十分に把握するとともに、地域の実情に応じた適切な給付が行われるよう、引き続き、障害保健福祉関係主管課長会議等を通して市町村への周知に努めてまいります。 【新型コロナウイルス感染拡大に伴う対応】 (8)視覚障害者が新型コロナウイルスワクチン接種を受ける際、会場で適切な情報提供や移動の支援が受けられるよう配慮すること。 (健康局予防接種室)  ワクチン接種を希望する障害者が、実際にワクチン接種を実施する会場等においても必要な配慮・支援がなされるよう、介助者や家族に対して丁寧な説明を行うとともに、自治体に対して、可能な限り、視覚障害者等向けに放送や音声による案内等の障害特性を考慮した対応をお願いしています。  また、誘導員の配置等を行う場合も含め、自治体が接種の実施体制を確保できるよう、ワクチン接種体制確保事業等の財政支援を行っております。  引き続き、障害者が安心してワクチンを接種していただけるよう、自治体において適切な接種体制の構築に努めていただくとともに、そのための費用を国が全額負担する等、しっかりと支援してまいります。 (9)視覚障害者に対し、新型コロナウイルス感染拡大に伴う対策として生活支援金を支給すること。 (自立支援振興室)  視覚障害者に対する新型コロナウイルス感染症に係る支援策としては、検査や入院が必要になった際に安心して移送・看護等が受けられる体制の整備、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種の際の合理的配慮の提供、宿泊療養の運営にあたり、地域の実情に応じ、障害者に特性に応じた対応等について、都道府県等と連携して取り組んできているところです。  視覚障害者のみを対象とした生活支援金の支給は難しいと考えておりますが、引き続き、視覚障害者が適切な支援を受けられるよう対応してまいります。 (10)新型コロナウイルス感染症の変異ウイルス及び今後様々な感染症が発生することを想定し、視覚障害者に配慮した対策を行うこと。 (自立支援振興室)  新型コロナウイルス感染症のワクチン接種については、「新型コロナウイルス感染症に係る予防接種に関する合理的配慮の提供について」(令和3年3月3日付事務連絡)において、視覚障害者の郵送物選別に資するよう、内容や自治体名等の点字や拡大文字での表記、接種会場における放送や音声による案内や公的な福祉サービスによる支援(居宅介護、重度訪問介護、同行援護、意思疎通支援事業等)等、障害特性に応じた合理的配慮の提供を地方自治体に対して依頼してきたところです。また、「障害者に係る新型コロナウイルス感染症に対応した宿泊療養の運営について」(令和3年6月16日付事務連絡)において、宿泊療養時にも地域の実情に応じ工夫した対応が行われるよう、重ねて地方自治体に対して依頼してきたところです。  引き続き、関係部局とも連携しながら、視覚障害者が適切な支援を受けられるよう対応してまいります。 【高齢者問題】 (11)自治体における盲養護老人ホームへの入所措置控えを解消すること。 (高齢者支援課)  今後、高齢化の進展に伴い、社会的孤立の問題等が顕在化し、介護ニーズや介護以外の生活課題を抱える低所得の高齢者が増加することが見込まれ、居宅での生活が困難な低所得の高齢者に対する地域における受け皿として、養護老人ホームが果たすべき役割を果たすべき役割をはますます重要になると考えています。  盲養護老人ホームを含む養護老人ホームについては、地方分権推進の観点から、いわゆる三位一体改革により措置費等を一般財源化し、地方公共団体に権限と財源を移譲したことから、入所措置等については、地方公共団体において適切に対応されるべきものであると考えており、全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議等を通じて地方公共団体に対し、必要な者に対する措置制度の適切な活用等をお願いしています。(※2)  今後も、様々な機会を通じて、適切に養護老人ホームの運営が図られるよう周知してまいりたい。 (※2)お願いの一例:令和2年度全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議(令和3年3月9日)の資料(抜粋) 9.養護老人ホーム・軽費老人ホーム等について (1)養護老人ホーム及び軽費老人ホームの適切な運営の推進 (運用全般について)  今後、高齢化の進展に伴い、社会的孤立の問題等が顕在化し、介護ニーズや介護以外の生活課題を抱える低所得の高齢者が増加することが見込まれる。このような状況の中、居宅での生活が困難な低所得の高齢者に対する受け皿として、措置施設である養護老人ホームや無料又は低額な料金で入所が可能な軽費老人ホームが果たすべき役割はますます重要なものになると考えている。  養護老人ホームの措置状況を見ると、地域によっては定員に対する入所者の割合が必ずしも高くないケースもあると承知している。各自治体においては、①入所措置すべき者の適切な把握、②所在地以外の養護老人ホームも含めた広域的な施設の活用、③柔軟な入所判定委員会の開催等、必要な者に対する措置制度の適切な活用をお願いしたい。 (運営費について)  養護老人ホーム及び軽費老人ホームについては、運営費及び30人以上の定員の施設に係る整備費が一般財源化されており、その役割を適切に果たしていくためには、地方財政による継続的な支援が不可欠であることから、単価の引上げや加算の充実について、各自治体においては、福祉担当部局と財政担当部局との密な連携をお願いしたい。  併せて、令和元年10月の消費税率の引上げに係る地方財政措置の対応については、地方交付税において措置されていることを踏まえ、各自治体においては、福祉担当部局と財政担当部局との密接な連携を図りつつ、「老人保護措置費支弁基準」及び「軽費老人ホーム利用料等取扱基準」について、適切な改定をお願いしたい。(令和元年9月6日付事務連絡「消費税率の引上げに伴う「老人保護措置費支弁基準」及び「軽費老人ホーム利用料等取扱基準」の取扱いについて」参照) (12)介護保険に移行した障害者の福祉サービスについて、移行前の質と量を担保すること。 (障害福祉課)  障害福祉制度と介護保険制度の関係については、「保険優先の考え方」に基づき、同様のサービスを保険制度である介護保険サービスにより利用できる場合には、まずは介護保険サービスを利用していただくこととなっております。  ただし、一律に当該介護保険サービスを優先させることはせず、申請に係る障害福祉サービスの利用意向を聴き取りにより把握した上で、申請者が必要としている支援内容を介護保険サービスにより受けることが可能か否かを適切に判断する必要があると考えております。  具体的には、サービスの支給量が、介護保険サービスのみでは適切に確保することができないと市町村が認める場合や、障害福祉サービス固有のものと認められるサービスを受ける場合は、障害福祉サービスを引き続き受けることが可能となっております。  こうした取り扱いが自治体において適切に運用されるよう、国として、通知や事務連絡等で自治体に示しているところであり、障害保健福祉関係主管課長会議等の場においても、周知を図っているところです。 (13)一般の介護施設において視覚障害者の受け入れ体制を充実させること。具体的には、施設内に点字や音声ガイドをつけ、視覚障害者支援ができる専門的訓練を受けた職員の配置等をすること。 (高齢者支援課)  介護施設における視覚障害者の受け入れ体制の充実については、障害者生活支援員の配置等を満たす指定介護老人福祉施設に対し、障害者生活支援体制加算によって加算を行っているところです。  また、昨年9月23日に発出した事務連絡「介護サービス事業所・施設における盲ろう者向け通訳・介助員派遣事業の取扱いについて」において、「当該事業所の従業者以外の支援者が介護サービス利用中に付き添い、コミュニケーション支援を行うことは差し支えない」旨を自治体経由でサービス事業者等に周知しております。  引き続き、介護施設における視覚障害者の受け入れ体制について、必要な対応を検討してまいりたいと考えております。 【身体障害者手帳】 (14)身体障害者手帳をマイナンバーカードに包含し、マイナンバーカードの提示により、行政手続きや各種支援サービスが受けられるようにすること。 (障害保健福祉部企画課)  身体障害者手帳に記載されている情報については、既にマイナポータル(※3)を通じて、ご本人がご自身の手帳情報を取得することが可能となっており、それにより、手帳そのものを提示しなくても、障害者割引が容易に受けられる民間事業者の取り組みがあると承知しています。  ご要望については、厚生労働省だけでなく関係省庁等が関わる課題であると考えています。厚生労働省としては、引き続き、関係省庁等と連携しながら、前述のマイナポータルを通じた取り組み等を推進し、障害者の利便性の向上等に努めていきたいと考えています。 (※3)マイナポータルについて  マイナポータルでは、利用者が、民間や自治体等が提供するウェブサイトで、本人が同意した上で、行政機関等が保有する自分の情報を簡単に登録できるよう、システム間で連携する機能を提供している。 (15)眼球使用困難症を身体障害者手帳の認定基準に加えること。 (障害保健福祉部企画課)  身体障害者手帳の交付の認定基準は、身体機能に一定以上の障害があること、その障害が永続するものであることを基本として定められており、現在、視覚障害の認定基準は、視力・視野に関する医学的検査の結果に基づいて作成されています。  一方、視力・視野に異常はないものの、眼瞼痙攣や羞明等の症状で日常生活に支障をきたす、いわゆる「眼球使用困難症候群」は、原因や病態が未解明であり、客観的な診断基準や医学的検査方法が確立していないため、身体障害者手帳における視覚、障害の認定の対象とはされていません。  このため、厚生労働科学研究において眼瞼痙攣や羞明等の症状がある者を対象として日常生活への支障の程度の評価を行う等、いわゆる「眼球使用困難症候群」の実態の把握を進めているところです。  今後とも、より公平かつ適切な障害者支援施策を実現できるよう、最新の医学の進歩等の状況、障害種別間の全体的なバランス、関連諸施策への影響等の観点も含め、継続的に認定基準の見直しの検討を進めてまいります。 【医療機関における支援】 (16)入院時においてもホームヘルパーを利用できるようにすること。 (障害福祉課)  病院等に入院中の障害者への対応については、健康保険法の規定等により、障害をもたない入院患者と同様、基本的には病院等が実施することとされています。  しかしながら、コミュニケーションに特別な技術が必要な障害を有する患者の入院において、当該患者へのコミュニケーション支援に熟知している支援者が、その入院中に適切な支援をすることは重要であると考えています。  そのため、厚生労働省においては、特別なコミュニケーション支援が必要な障害者については、従前より、支援者が入院中に付き添いを行うことを可能としており、その旨について通知(※4)でお示ししているところです。  加えて、令和3年9月1日付けで、「特別なコミュニケーション支援が必要な障害児者に対する医療機関における対応について」の事務連絡を送付し、障害児者に対する特別なコミュニケーション支援が適切に行われるよう改めて周知しています。  これまでお示しした解釈が医療機関に行き届くよう、引き続き都道府県を通じ必要な周知を行ってまいりたいと考えています。 (※4)通知について  「特別なコミュニケーション支援が必要な障害者の入院における支援について」(平成28年6月28日付保医発0628第2号)により、看護にあたり、コミュニケーションに特別な技術が必要な障害を有する患者の入院において、入院前から支援を行っている等、当該患者へのコミュニケーション支援に熟知している支援者が、当該患者の負担により、その入院中に付き添うことは差し支えないとされています。 (17)医療費の自己負担につき、障害者医療扶助が使える場合は、窓口での支払いをしなくても済むように法制化すること。少なくとも、窓口での支払いをしなくてもよいようにしている自治体に課せられているペナルティーを撤廃すること。 (保険局国民健康保険課)  医療保険制度では、医療を受けた人と受けない人との公平や、適切な受診を確保する観点から窓口負担を求めているが、自治体の医療費助成により窓口負担が軽減される場合、受診率が上昇し医療費が増加する傾向にある。  このため、自治体独自の医療費助成によって増加する医療費については、その性格上、当該自治体が負担するものとし、国の公費負担を国民健康保険国庫負担金減額調整措置(※5)として減額調整している。  このように、減額調整措置については、限られた財源の公平な配分や、国保財政に与える影響等の観点から講じているものであり、ご理解いただきたいと考えている。 (※5)減額調整措置の補足  子どもの医療費助成に係る国保の減額調整措置については、ニッポン一億総活躍プラン(平成28年6月閣議決定)や関係審議会における検討の結果、平成30年度より、未就学児までを対象とする医療費助成については、減額調整措置を行わないこととした。当該見直しについては、様々なご意見がある中で、関係審議会における議論等を踏まえ、対象を未就学児までとしたところであり、更なる見直しについては、慎重な検討が必要である。 【読書バリアフリー】 (18)「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律」(読書バリアフリー法)に基づいて、地方自治体が計画作成と予算化を進めるよう、国が地方自治体に指導すること。 (自立支援振興室)  厚生労働省としては、「読書バリアフリー法を踏まえた障害福祉関連施策の推進について(通知)」(令和3年3月29日付室長通知)において、地方自治体における計画策定及び関連施策の推進が図られるよう、各施策の実施に係る留意事項について周知したところです。  また、地域生活支援促進事業において、視覚障害者等の読書環境の整備を図ることを目的とした「地域における読書バリアフリー体制強化事業」を令和2年度から実施しており、本事業を積極的に活用していただくよう、引き続き各自治体に対して、障害保健福祉関係主管課長会議の場等、円滑な事業の実施に努めるよう周知等に努めてまいります。 【年金】 (19)障害年金の支給額を増額すること。 (年金局年金課)  公的年金制度については、保険料を負担する現役世代の負担が過重なものとならないよう、保険料の上限を固定し、国庫負担や積立金とあわせて、財源の範囲で給付水準を調整する仕組みを導入しており、こうした仕組みの中で、できるだけ給付水準を確保することができるよう取り組んでまいります。  障害基礎年金を受給している者には、令和元年10月に創設された年金生活者支援給付金により、障害等級1級の者には月額6,288円(令和3年度)、障害等級2級の者には月額5,030円(令和3年度)を上乗せして支給することとしており、障害基礎年金とあいまって、今まで以上に障害者の生活を支えてまいります。 【ロービジョンケアに関する診療報酬改定】 (20)現行の視能訓練には、「斜視視能訓練」と「弱視視能訓練」があるが、これらに「ロービジョン視能訓練」を新たに追加し、ロービジョン検査判断から引き続いて実際のロービジョン訓練が受けられるようにすること。 (保険局医療課)  我が国の健康保険制度においては、疾病に対する診断・治療について保険給付の対象としています。  保険適用とする医療の具体的な内容等については、その医学的な有効性や安全性も踏まえつつ、必要に応じて中央社会保険医療協議会において検討してまいります。 【その他】 (21)障害者優先調達法の理念に基づき、視覚障害あはき師に対する職業的支援として、視覚障害あはき師が経営する鍼灸マッサージ施術所で利用できるマッサージ券等の交付を、全国各地で実施すること。 (医政局医事課、障害福祉課)  あはき施術に対する公費助成は、各自治体が独自の財源で実施しているものと承知しておりますが、国として、具体的に何ができるか等は皆様と意見交換をしながら、慎重に考えていきたいと思います。  なお、障害者優先調達推進法は、国等の行政機関が物品及び役務の調達にあたって、優先的に障害者就労施設等から物品等を調達することを努力義務とすること等を定めた法律であるため、同法に基づき視覚障害をお持ちのあはき師が経営する鍼灸マッサージ施術所で利用できるマッサージ券を交付することは難しいと考えます。 33ページ 02 厚生労働省(職業関係) 1.日時  令和3年8月30日(月) 11時00分~12時30分 2.場所  オンライン 3.出席者 (1)日本視覚障害者団体連合                      会長  竹下 義樹                  総合相談室長  工藤 正一                    事業部長  逢坂 忠                    情報部長  吉泉 豊晴                     事務局  木村 幸平                     事務局  佐藤 絵里 (2)厚生労働省  大臣官房   人事課              課長補佐  吉村 賢敏  人材開発統括官   特別支援室            室長補佐  塩田 尚志  職業安定局   障害者雇用対策課    調整係                   木村 好   障害者雇用対策課地域就労支援室    職場適応援助係           係長  佐藤 友紀  社会・援護局障害保健福祉部   障害福祉課    就労支援係                 野原 千宮満  医政局   医事課             医事専門官  太田 富雄  保健局   医療課           医療経済専門官  堀本 陽司 4.陳情項目、回答、意見交換 (1)視覚障害者の職域拡大のために、国や市町村等の公的機関、民間企業で視覚障害あはき師をヘルスキーパーとして雇用させること。 (障害者雇用対策課 木村)  民間企業における職域拡大について回答する。まず、全国のハローワークでは、高齢・障害・求職者雇用支援機構が作成したマニュアルや好事例集を個別求人の開拓の際に活用しながら、雇用主の理解の拡大に努めている。さらに、視覚障害者の個々の技能やニーズを踏まえながら、業務における支援方法を民間企業に広める等、職域拡大にも努めている。今後も、これらの取り組みにより、視覚障害者の雇用の拡大に努めたい。 (人事課 吉村)  民間企業以外の部分として、厚生労働省で働く障害者を前提に回答する。まず、全ての障害者が生き生きと働ける環境を整備することは大変重要と考えている。行政機関で働く障害者についても職場の環境整備を図ることは重要で、視覚障害者であれば拡大読書器等の支援機器を用意し、これらを活用しながら行政機関としての業務を担い、それぞれが活躍しているものと承知している。  一方で、厚生労働省の業務は年々拡大しているが、国の予算には限りがあるため、業務量に比例して職員数が少ないと指摘されている。このような状況があるため、職員の健康管理のために視覚障害あはき師をヘルスキーパーとして雇用することは、国民の理解が得られないと懸念している。 (逢坂部長)  最近、各府省庁の職員は激務のために体調を崩し、仕事を辞めてしまう者も多いと聞いている。そうなると、ヘルスキーパーを利用して健康増進を図り、職員の体調管理に努めることも、業務効率の観点から重要ではないだろうか。回答の中で「ヘルスキーパーの導入に国民の理解が得られない」という部分は、こういったメリットを踏まえると、理解できない回答だ。 (竹下会長)  回答の「国民の理解が得られない」は根拠があって回答をしているのか。国民の誰かが「国の機関にヘルスキーパーを置いてはならない」と言ったのか。我々は、そのようなことは聞いたことがない。過去に公務員向けの保養所等のことでマスコミから国が糾弾された経過があることは理解している。そして、このような経過があり、今回の回答の一端になっていることも理解している。ただ、ヘルスキーパーはこれらの福利厚生とは違うものだ。ある民間企業では、ヘルスキーパーを置いたことで社内の業務効率が向上したとの事例がある。つまり、職員の健康維持を図ることで、業務効率の改善が図られているのだ。また、視覚障害者の職域拡大や法定雇用率の確保にも繋がっている。ヘルスキーパーを配置することは、誰にとっても悪いことではない。もっと前向きに検討してほしい。 (工藤室長)  視覚障害あはき師をヘルスキーパーとして雇ってる府省庁は防衛省のみと聞いている。また、以前、外務省でもヘルスキーパーの導入を検討しているとも聞いた。ぜひ、業務効率の観点から、国の機関にヘルスキーパーを置くことを前向きに検討してほしい。 (2)電話交換手の養成事業を復活させ、積極的に養成事業を実施すること。 (特別支援室 塩田)  厚生労働省では、全国の障害者職業能力開発校や委託先の訓練機関等の一部において、視覚障害者向けの職業訓練を実施している。要望の電話交換手については、障害者能力開発訓練事業として、委託機関である日本ライトハウスで養成事業を実施しており、機器の操作等の訓練を行っている。 (竹下会長)  今でも、日本ライトハウスに申し込みを行えば、訓練を受けることができるのか。 (特別支援室 塩田)  はい、その通りです。電話に関する訓練の他に、業務で利用するパソコン操作等の訓練も行っていると聞いている。 (3)視覚障害者の一般就労に対応した訓練体制の整備とジョブコーチの育成をすること。 (特別支援室 塩田)  障害者の職業訓練について回答する。視覚障害者を含む障害者の職業訓練は、全国の障害者職業能力開発校等で実施している。現在の職業訓練は、申し込みをすれば比較的利用しやすい状況となっているので、引き続きこれらの活用を通して、障害者の職業訓練の充実に努めたい。 (障害者雇用対策課 佐藤)  ジョブコーチの育成について回答する。ジョブコーチの育成は、高齢・障害・求職者雇用支援機構や一部の民間機関で養成事業として実施しており、厚生労働省としてもジョブコーチを増やすことは重要と考えている。  一方で、昨年度実施した「職場適応援助者養成研修のあり方に関する研究会」において、特定の障害種別に特化したジョブコーチを養成することは「必要な専門的知識を有した人材にジョブコーチのスキルを付与することが大切」との意見があった。そのため、関係機関から視覚障害者支援を行っている者や団体に対してジョブコーチ養成研修の情報を提供し、養成研修に参加してもらうことで、視覚障害者に特化したジョブコーチを増やしていきたいと考えている。 (竹下会長)  高齢・障害・求職者雇用支援機構の報告書等を見ていると、「専門性のある特定の分野での養成」が必要とされているが、視覚障害者に特化したジョブコーチはほとんど養成されていない。厚生労働省においては、まず、この養成されていない理由を整理すべきではないだろうか。例えば、養成の希望者が少ないのであれば、視覚障害者を雇用する企業においてジョブコーチの必要性を理解していないことが理由になるのかもしれない。また、視覚障害に特化したジョブコーチがいることで、就労する視覚障害者にどのようなメリットがあるのかも整理すべきだと思う。 (吉泉部長)  今の国の職業訓練は離職者に対する支援が中心となっており、在職者に対する支援は乏しいことから、在職者向け職業訓練の充実が求められる。例えば、中途で視覚障害になった者が引き続き同じ仕事を続けるためには、リハビリを含む訓練を在職者として受ける必要があるが、実際に障害者職業能力開発校や委託訓練でそうした訓練を行っている所は少ない。在職者訓練の充実を更に進めるべきではないか。  また、視覚障害者の職業訓練はマンツーマンで行う必要があり、集合訓練で行うことは難しい。しかし、障害者委託訓練の委託料は集合訓練を前提に設定されており、受託機関からはマンツーマン方式の訓練の継続が財政的に厳しい等の意見をよく聞く。こういった委託制度の報酬面の改善も必要ではないだろうか。 (4)職場介助者制度を視覚障害者が障害の実態に即して使いやすくするため、視覚障害者からその配置を求めることができる制度に改めること。 (5)就労を希望する視覚障害者が希望した職業で安定して働き続けられるよう、職場介助者が確実に配置され、あるいは合理的配慮が確実に実施される等、更なる雇用環境の改善を図ること。 (障害者雇用対策課 木村)  まず、障害者が業務遂行を行うため職場介助者を配置・委嘱する場合、障害者雇用納付金制度を活用し、その費用の一部を助成することができる。ただし、この職場介助者の配置を実施するかどうかは雇用主の判断によるものになっている。そのため、合理的配慮の下で働く障害者が必要な支援を受けられるようにすることも重要になっている。厚生労働省としては、障害者雇用納付金制度を推進しつつ、職場介助者の配置等が合理的配慮の下で行われるよう、合理的配慮の事例集等の周知を通して、雇用主側に合理的配慮の理解を促していきたい。 (竹下会長)  現行の障害者雇用納付金制度では、雇用主の判断によって職場介助者が付くかどうかが決まることは理解している。そして、職場介助者を合理的配慮の中で実施してほしいとも考えている。それだけに、好事例を雇用主に紹介することは非常に大切だと思っている。例えば、障害者雇用促進法を改正した際に作った合理的配慮指針に、職場介助者に関する好事例を例示したら、非常に価値があるのではないか。また、各地の労働局が所管する個別労働紛争解決制度において、その施行令等に好事例を示すことも良いかもしれない。こういった好事例の広め方も検討してほしい。 (6)視覚障害者の就労の場及び居場所として、「就労継続支援A・B型」事業所利用条件を65歳までから70歳までに改正すること。 (障害福祉課 野原)  現在、就労継続支援B型は年齢による制限はなく、A型についても一定の要件を満たすことで65歳以上でもサービスの提供が可能となっている。  今後も65歳以上の雇用の在り方については、一般の労働市場の動向を踏まえながら、必要な対応を検討していきたい。 (7)重度障害者等就労支援特別事業としての通勤や職場等における支援に関するガイドラインを、より実効性の高い内容に改定し各自治体が取り組みやすくするとともに、地方自治体に対し確実に実行されるよう働きかけること。 (8)重度障害者等就労支援特別事業として、通勤に同行援護が利用しやすいものにすること。 (9)重度障害者等就労支援特別事業を地域間格差のない利用しやすい制度とすること。 (10)重度障害者等就労支援特別事業の普及のため、国は市町村に対し制度の対象者や趣旨について情報提供を徹底するとともに、具体的な活用事例を示すためのモデル事業を実施すること。 (障害福祉課 野原)  重度障害者等就労支援特別事業は令和2年10月より開始したものの、事業を実施する自治体はまだ少ない状況にある。これは、新型コロナウイルス感染症の影響等により、各自治体で情報収集や体制整備に支障が出ていることが背景にあると考えている。厚生労働省としては、全国の自治体が同事業を実施できるよう、YouTubeにおいて解説動画を公開する等して、引き続き、全国の自治体に対して丁寧な周知を行っていく。  なお、令和3年度については、29自治体が本事業を実施する見込みとなっており、事業を開始する自治体は増えている。今後はこれらの自治体の取り組み状況を把握しながら、モデル的な事例等を情報収集し、事例の周知等を通して各自治体の取り組みを後押ししていきたい。  なお、全国の自治体で進められている本事業の取り組みの中で、同行援護に関わる具体的な事例までは把握していない。しかし、制度の取り組み状況を把握する中で、同行援護利用者が同事業を利用しやすくすることも重要なので、関係する課題等の整理を行っていきたい。 (竹下会長)  この事業を開始する自治体の情報は、各地の自治体と交渉する上で重要な情報となるので、引き続き、情報提供をお願いしたい。この事業を全国で広めるためには、我々から好事例を自治体に情報提供するような働きかけが必要だと思っている。我々も、全国の会員への周知や自治体への働きかけを行っていくことで、この事業の拡大に協力したい。 (11)受領委任制度において鍼灸マッサージを柔整師と同様に取扱うこと。 (医療課 堀本)  療養費は、医療機関での治療を行うことが困難な場合に療養の給付に代えて支給されるものとしている。鍼灸では、慢性の痛みを主症とする病態が施術の対象であり、マッサージでは、筋麻痺や関節拘縮がある場合等の施術が該当し、これに係る療養費を求める際は、医師の同意書等の添付が必要となっている。他方、柔道整復師による施術は、ある程度定型的なものであり、保険医療機関等における治療に代わって行われることが一般的であることから、以前より同意書を必要としないものになっている。なお、平成31年4月からあはきの受領委任制度の取り扱いが開始されたことに伴い、あはきの適正化策の一環として、医師の同意書の添付が義務化されている。これらのことについては、保険者や施術者団体の代表者で構成される「社会保障審議会医療保険部会あん摩マッサージ指圧、はり・きゅう療養費検討専門委員会」において審議を受けた上で成立したものであり、適切に制度運営されているものと考えている。 (12)病院治療と鍼灸治療の療養費払いの併用を認めること。 (医療課 堀本)  まず、健康保険法第87条では「保険医療機関以外から手当てを受けた場合、保険者がやむを得ないものと認めるときは、療養の給付等に代えて、療養費を支給することができる。」と示されている。この点に基づき、鍼灸の施術を保険者が認める時には、療養費として保険給付がされることになっている。これらについては平成16年10月に発出された通知「はり師、きゅう師及びあん摩・マッサージ・指圧師の施術に係る療養費の支給の留意事項等について」において、支給対象や取り扱い等が決まっている。この通知では、医師による適当な治療手段がない場合に支給の対象とされていることから、同一疾病に係る併給は認められていない。なお、保険者については、この通知に基づいて支給を認めるかどうかの判断になると承知している。 (竹下会長)  陳情項目(11)で柔整とあはきの取り扱いの差異を説明した部分と、この陳情項目(12)で療養の給付と療養費払いの併用がいけないと説明した部分は、我々としては矛盾があると理解している。なぜかというと、健康保険法第87条によれば、療養の給付に寄り得ない時にだけ療養費制度を利用できるとされているのに、柔整の場合は、同意書がないことで、療養の給付が必要かどうか判断することなく療養費に基づいた償還払い制度が利用できている。これは本質的に問題がある。療養の給付を保険給付の柱にしている以上は、療養費制度をその例外とするのは崩したらいけないと思う。そうなると、柔整の取り扱いについて、健康保険法第87条との関係に矛盾が生じないように、どこかで納得できる内容に整理する必要がある。 (医療課 堀本)  同意書の扱いについては審議会で検討されたもので、関係者の合意の上で成立していると考えている。制度を抜本的に変えるのであれば、関係者を交えた綿密な議論が必要だと思う。 (13)最高裁においてもあんま師等法第19条の正当性が認められるよう万全の体制で臨むこと。 (医事課 太田)  まず、あん摩マッサージ指圧が視覚障害者にとって重要な職種であることは承知しており、重要な職種であるだけに同法の19条があると認識している。そして、該当の裁判では、概ね国の主張が認められていると認識している。なお、仙台、東京、大阪の3つの訴訟とも原告側は上告をしており、厚生労働省としては、引き続き、法律の正当性について主張していきたいと考えている。 (14)三療における無免許、違法業者の取り締まりを強化すること。 (医事課 太田)  無資格者が行う医業類似行為で処罰の対象となるのは、人の健康に害を及ぼす業務に限局されている。人の健康に害を及ぼすかは、施術を受けた者の健康状態や年齢等、様々な条件を考慮しながら判断を行う必要がある。そのため、実際に行われた行為に対して個別具体的に判断を行うものとなり、一律の判断を行うのは難しいと考えている。しかしながら、法的資格制度がない医業類似行為によって事故が発生することは、公衆衛生を維持する観点から、到底看過できないものと考えている。従って、厚生労働省としては、都道府県に対して、無資格者による違反行為に対しては消費生活センターが持つ情報を活用しつつ、悪質な事例については警察との連携により告発を行い、地域での指導・取り締まり体制を強化することをお願いしている。  また、無資格者の広告については、あん摩マッサージ指圧師による施術を行っていない施設が「マッサージ」等と広告をすることは、同施設においてあん摩マッサージ指圧が行われていると一般人が誤認する可能性があり、問題があると認識している。そのため、厚生労働省では、このような広告をなくすために、平成30年より「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師等の広告に関する検討会」を立ち上げ、改善策を検討している。 (15)新型コロナウイルス感染拡大の影響により収入が激減した視覚障害を有するあはき自営業者や訪問マッサージ等に従事する者に対し、一律に10万円を給付する等の支援を実施すること。 (医事課 太田)  新型コロナウイルス感染症の影響により経営が厳しいあはきの施術所を含む中小企業に対しては、日本政策金融公庫による無利子の融資、中小企業庁による月次支援金や一時支援金といった支援制度が活用されている。また、事業活動の縮小で事業主が雇用調整のために労働者を休業させて休業手当を支払った場合、雇用調整助成金の支援もある。あはき業におかれてもこのような制度を活用してほしい。 (16)あはき施術に対し公費助成を受けられる制度を全国に広めること。 (医事課 太田)  マッサージ券の配布等の公費助成は、各自治体が独自の財源で実施しているものと承知している。そのため、財源の観点から厚生労働省として自治体に指導等を行うことは難しい。引き続き、関係団体等と意見交換や事例収集を行い、関係する主管課長会議等で自治体担当者に事例紹介等の周知を行いたい。 (17)あはき免許保有証更新時の添付書類を簡略化すること。 (医事課 太田)  あはきの免許保有証は東洋療法研修試験財団が発行を行っている。免許更新時に添付する書類は、必要最低限のものを指定していると思われるが、要望があった旨は同財団に報告したいと思う。どのような書類を簡略化すべきかの意見があれば教えてほしい。 (逢坂部長)  新規の手続きについてはこれまで通りの書類が必要だと思うが、更新も同様の書類が必要となっており、手続きが煩雑になっている。そのため、更新の手続きを控える者が増えている。我々としては、更新において内容変更がない書類等は簡略化してもよいのではないかと考えている。書類が簡略化できれば、東洋療法研修試験財団にとってもメリットがあると思う。 (18)広告等において「治療院」の名称を使えるようにすること。 (医事課 太田)  あはきの施術所の名称に、例えば「○○治療院」と用いることは、行政解釈上では使用できないものと考えられている。一方でこのような名称が行政に受理されていることも承知している。施術所の広告事項については、前述の検討会において検討を進めており、第8回の検討会においては、施術所の名称として「業態」と「治療院」を付けられるようにすることを事務局案として提示した。しかしながら、関係者の意見調整を行う中で、反対の意見もあり、合意には至っていない。引き続き、関係者の意見調整を行いたい。 (竹下会長)  陳情項目(14)にも関わることだが、無免許の取締り、広告規制の検討、ガイドライン作りは、ある意味で一体として考えるべきではないか。 (医事課 太田)  我々もこれらは一体となって考えるべきだと思っています。 (竹下会長)  医業類似行為の判断基準は、昭和35年の最高裁判決に影響されていることは理解している。ただ、あはきの免許を持っている・持っていないの違いで無免許者を取り締まることは、法解釈上でも難しくないと思う。それだけに、ガイドライン等であはきの業務内容を明確にすることができれば、あはき法第1条違反として取締りができるのではないか。 (医事課 太田)  その通りだと思います。医業類似行為の明確な定義が法レベルで規定することができれば、誰にとっても違法かどうかが分かりやすい。ただ、規程等の変更となると相当な議論が必要なため、簡単には行えないことはご承知いただきたい。 44ページ 03 人事院 1.日時  令和3年8月23日(月) 10時15分~10時45分 2.場所  中央合同庁舎第5号館別館 3.出席者 (1)日本視覚障害者団体連合                     副会長  佐々木 宗雅                    組織部長  三宅 隆                    情報部長  吉泉 豊晴                     事務局  遠藤 剛                     事務局  佐藤 絵里 (2)人事院  事務総局   総合調整官  総務課長補佐(統括)事務取扱  今村 昌弘   総務課(調整班)               小林 智幸                          高木 瞭 4.陳情項目、回答、意見 (1)平成30年度から実施されている障害者を対象とした国家公務員選考採用試験を恒久的な制度として実施すること。 (事務総局 今村)  平成30年の障害者選考試験は、一連の不祥事を経て実施された。平成30年の冬に1回目の試験があり、令和元年9月頃に2回目の試験があった。以降、令和2年、令和3年は今のところ実施されていない。  人事院としては、公務部門における障害者雇用に関する基本方針の要請を踏まえて、各府省が行う選考のうち、募集と第一選考である基礎能力試験と作文試験を人事院が委任を受けて実施している。その後、障害者選考試験は全体の政策等や各府省からの意向等を踏まえて検討していくことであるが、現時点で各府省から人事院に話はなく、各府省で検討中ではないかと思われる。  今後についても、公務部門における障害者雇用に関する政府全体の方針等を踏まえて、各省庁の意向等、採用ニーズを踏まえて検討していくことになると思う。 (吉泉部長)  いわゆる水増し問題をきっかけにして、障害者を対象とした特別な選考試験が行われ、雇用率を達成したということで、現在は行われなくなったが、これを継続して行っていただきたいと考えている。  健常者と同じ一般の採用試験は点字でも受けられるようになっているが、実態としてなかなか合格者が出ない。30年以上行っているにも関わらず、点字で合格したのは1名だけである。これは、視覚障害者の能力が低いのではなく、試験上のハンディキャップがあるためだ。一般競争試験を受けられるというのは大事なことだが、視覚障害者が公務員として採用されるためには、障害者の特別枠が必要である。国家公務員として働く視覚障害者が増えていけば、その周辺の人たちの理解も深まるとも思うので、視覚障害者の採用を増やしていただきたい。  ちなみに、視覚障害者が試験にどれくらいハンデがあるかというと、1.5倍の時間延長でもまだまだハンデが大きく、2.2倍程にしないと実質的なハンデの解消にはならないと言われている。ただ、実際問題として、試験時間を2.2倍に延長するというのは、試験を実施する上でとても困難である。実質的に視覚障害者の採用を進めるという事で言えば、一般競争試験の他に、障害者選考試験が必要だと思う。 (2)視覚障害のある国家公務員が能力を発揮できるよう、職場介助者制度やジョブコーチ、各種訓練を利用できるようにすること。 (事務総局 今村)  平成30年10月23日、公務部門における障害者雇用における基本方針が発出された。各省庁や主管庁である厚生労働省がやるべきことが具体的に書かれている。これを踏まえて、人事院としても平成30年12月27日に障害者に対しての各省庁の長が講ずべき措置に関する指針を人事院の職員福祉局及び人材局局長名で発出した。これに基づいて各府省等は動いていくべきであるし、場合によっては人事院が相談を受けながら指導等している。いずれにしても、基本方針や指針について、正確に取り組んでいるものと考えている。 (吉泉部長)  現在、職場介助者やジョブコーチ、職業訓練の制度というのは、基本的に民間が対象のものとなっている。職場介助者は雇用納付金制度に基づく助成金により制度化されており、ジョブコーチも雇用保険の加入者が対象だが、公務員はジョブコーチの支援を受けられない。また、公務員になってからスキルアップのための訓練を受けようと思っても、在職者訓練の制度も公務員は対象外となっている。  なぜ対象外になっているかというと、背景には、公務部門というのは障害者の採用や採用後の配慮を率先して行うことになっているが、視覚障害者からの相談を受けていると、実態は残念ながらそうなっていない。結局、水増し問題も同じことで、建前的には率先垂範して障害者を雇うはずのところが実態としてはそうなっていなかった。  なお、このジョブコーチの支援や、それに該当するような支援を実際に受けている人もいる。ただ、これはその時の障害者の上司の判断や人事課の判断で、配慮のある人に行き当たれば受けられるが、そうとばかりは限らず、不安定である。そのため、民間部門と同じように制度化することが必要だと考えている。 (三宅部長)  基本方針や基本の指針をいろんな省庁と話し合いながら進めているということだが、各府省庁との連絡会議のようなものがあるのか。 (事務総局 今村)  連絡会議のようなものがあるかは把握していない。  基本的には今回の障害者選考試験までの一連の経緯を踏まえて、「公務部門における障害者雇用に関する基本方針」ができて、各府省庁はそれに準じてやっていくべきものかと思う。大方を見ると、厚生労働省が担う所が多いが、そういったことを踏まえて、人事院としても個々具体的な合理的配慮に関する指針を発出した。採用時や通常の勤務時においての配慮について示されている。  各府省庁がどのようになっているかという所までは、人事院では把握していない。 (吉泉部長)  上司や人事担当者の障害者への理解が大切だという話があったが、現実問題として、必ずしも理解のある人ばかりではない。障害者に理解のない人と遭遇してしまった場合、その人が人事異動するまで何年か辛抱しなければならない。そういうことがなるべく避けられるように、きちんとした指針を作り、指針が守られていないときに相談できる仕組みがないと、単純に理解、啓発を進めるというだけでは問題は解決しないと思う。  指針を作るとともに、その指針が守られていない場合どうしたらいいかという所まで踏み込んだ仕組み作りを考えていただきたい。 (事務総局 今村)  人事上のことは各省庁によるところなので、人事院から指示はできないが、こういったことは良くないのではないか、不適切ではないかといったことは、まず一次的には人事当局等に相談すべき話かと思う。これは、障害の有無を問わず、一般の職員も同じ。そういった取り組みはされていると思っている。  より具体的に効力、効果を発するため指針も必要なのではないかという話は承った。 (三宅部長)  その指針は我々が見ることはできるのか。  例えば、人事院から指針が発出されているといっても、各省庁がどのように受け取っているか分からない。我々の方でその指針を見て、このように指針が発出されているため、きちんと守って取り組むように各省庁への要望の形に繋げていけると思う。 (事務総局 今村)  平成30年12月27日付にて、「職員の募集及び採用時並びに採用後において障害者に対し各府省、各庁の長が講ずべき措置に関する指針について(通知)」という通知を出しており、人事院のHPに掲載している。 (3)障害者選考試験等で採用された視覚障害のある国家公務員が55歳で昇給ストップとならないよう、制度を改善すること (事務総局 今村)  平成25年、26年頃、人事院勧告、官民給与の比較調査を行った。その時に、国家公務員全体として、民間の相場と合わせて緩やかな給与カーブの見直しをし、世の中の水準、適切な給与のあり方等を踏まえた上で、55歳の昇給ストップが報告され、同年の国会で成立した。これは給与、生涯的な生活給に影響するので、障害を抱えている職員やこれから試験を受ける方、国の職員も非常に厳しいところではあるが、そもそもが民間準拠方式であり、国家公務員全体としてはこういった方針になって5、6年経っている。他方、障害を抱えた職員等においては、通常の職員とは違うといった議論はあるかと思う。それについても、人材局他、給与関係の担当者にもしっかりと伝えておきたいと思う。 (佐々木副会長)  同一年次に入った人が全員定年まで勤めるのが公務員の基本的なスタイルかと思う。それならば今の話で十分だが、水増し問題を受けて行われた障害者特別選考で採用された方は、年齢にばらつきがある。皆18歳から22歳ではなく、ある程度年齢がいってから公務員になられた方が多いと思う。その方たちが入った時に従来の同じ年次の人と同じ給与が出ているのであれば問題ないが、必ずしもそうではなく、入った年次が新しいとそれだけ給与が低い。その場合、55歳で昇給が止まってしまうと生活そのものが苦しくなり、退職金にも影響する。障害者特別選考で一斉に採用された方に関しては、別の年俸の基準が必要ではないか。 (事務総局 今村)  国の職員は標準的な考え方として、今の国家公務員の採用試験だと、一般職、総合職、その他専門職、中途採用者選考試験等があり、中途採用者選考試験を除けば、ほぼ横一線で入ってきている。それによって給与制度を踏まえて淡々と給与をもらっていくスタンスだが、障害者選考試験の場合は、入ってくる方の世代がまちまちである。そこでいろんな世代の人が入ってきて一律の給与基準ということには懐疑があるし、それぞれの実態を踏まえていないというのはおっしゃる通りだと思う。そのような声があるというのも聞いている。  高齢の方がその時に採用され、当然その高齢の方もそれなりの生活水準があり、新入職員と同じでいいのか。そういった切実な実態は、しっかりと担当部門に伝えたいと思う。 (4)公務員にも職場介助者を配置することができるような制度を新設すること。 (事務総局 今村)  陳情項目(2)でも申し上げた通り、基本方針、基本指針に沿って行うべきことかと思う。職場の上司や人事課の人がどこまで理解しているのかによって、環境も変わってくるため、まず理解することが大事だと思う。各省庁、人事院もいろんな障害のある人が非常勤等で働いている。同僚や職場の意識がどこまで浸透するか、これによって取り組み方等や省庁全体の考え方が変わってくる。そういった理解が必要だと思う。選考試験があってから4、5年経っているが、そういったことをより深くやっていく必要があると思っている。 (三宅部長)  民間では、職場介助者を設置する取り組みが行われているが、公務員に関してはそのような制度がないため、要望させていただいた。職場介助者の配置というのは視覚障害者が業務を遂行するうえで、非常に重要な要素になってくるため、特にお願いしたい。 50ページ 04 文部科学省 1.日時  令和3年8月30日(月) 13時30分~14時00分 2.場所  文部科学省会議室 3.出席者 (1)日本視覚障害者団体連合                    常務理事  橋井 正喜                    組織部長  三宅 隆                     事務局  石原 慎太郎 (2)文部科学省  初等中等教育局特別支援教育課  企画調査係長  髙橋 志織  男女共同参画共生社会学習・安全課   障害者学習支援推進室 障害者学習支援第二係長 阿部 圭但                  博士(薬科学)  柴﨑 浩之  総合教育政策局地域学習推進課   図書館・学校図書館振興室 図書館振興係係長  近藤 たみ  スポーツ庁   健康スポーツ課    障害者スポーツ振興室 障害者スポーツ係係長 片山 真貴    参事官(地域振興担当)付  施設企画係長  岡川 善尚 4.陳情項目、回答、意見交換 (1)地域の学校で視覚障害児が視覚障害児としての専門教育を受けられるよう、支援学校による指導を充実するため、復籍制度を整備すること。 (特別支援教育課 髙橋)  令和3年1月に取りまとめた「新しい時代の特別支援教育の在り方に関する有識者会議報告」では、特別支援学校に就学する際でも地域の小中学校に副次的に学籍を置くことができる等、障害者が居住地域との関係を維持できるとしている。文部科学省としても、この副次的な籍を置く副籍制度等を制度利用者に活用してもらいながら、情報共有を図っていきたい。 (三宅部長)  副籍制度は初等教育からということなのか、それとも幼児教育のころから利用できるようにしているのか。 (特別支援教育課 髙橋)  幼児教育の段階から地域との関わりを確保した上で、制度利用者への周知を行っている。報告書の中では副籍制度の部分では幼児教育について明文化はされていないが、報告書全般で幼児教育段階からの一貫した支援について記載されている。 (三宅部長)  小学校に入学してからでは遅いというわけではないが、視覚障害者としての生活の仕方を学び、同じ視覚障害者の仲間を持つことは大切で、時期が早いほど良い。一方で、自分の子供は地域の学校で学ばせたいという人もいる。今後とも取り組みを進めていただきたい。 (2)盲学校(視覚特別支援学校)の入学基準に眼球使用困難症候群患者を加えること。 (特別支援教育課 髙橋)  現在、視覚特別支援学校の入学基準は、学校教育法施行令22条の3で視覚特別支援学校に通う生徒の障害の程度を示しているだけで、入試や入学の基準等は学校の設置者等によって決められている。しかし、眼球使用困難症候群患者も含めた障害や症状等により日常生活を送ることが困難な人や、特別な支援を要する人の就学先は、障害、症状の程度によって多様であるため、教育的ニーズに応じて適切な就学先が決定されるよう、文部科学省としても引き続き、市区町村や都道府県の教育委員会に働きかけていく。 (橋井常務理事)  眼球使用困難症候群患者は、特別支援学校の設置者が許可を出せば、入学できるという解釈で良いか。 (特別支援教育課 髙橋)  特別支援学校や特別支援学級等、どの学び方が当事者にとって適切なのかは、市町村の教育委員会が総合的に判断している。その際の判断基準として、学校教育法施行令22条の3や通知、手引き等を示している。 (橋井常務理事)  総合的に判断とあるが、当事者から理解が得られるような基準を示してほしい。 (三宅部長)  教育委員会は、最終的に判断を行う前に、特別支援学校が行う教育相談での当事者や保護者の意見を参考に学校を選定すると思う。その際に学校教育法施行令22条の3の目安に重きを置きすぎる傾向がある。そのため、学校教育法施行令22条の3に囚われすぎないよう、市町村の教育委員会等へ通知してほしい。 (特別支援教育課 髙橋)  就学先決定の参考資料として教育支援資料があるのだが、令和3年6月30日に7年ぶりに改訂を行い、文部科学省から市町村の教育委員会に対して改訂の意図や変更についての要点を周知している。引き続き、適切に就学先を決定するよう、周知していきたい。  なお、教育支援資料については、文部科学省のホームページに掲載しており、今後は冊子化や委託販売を検討している。 (3)障害者スポーツの啓蒙・普及を目的とした高画質な動画を制作すること。 (健康スポーツ課 片山)  障害者スポーツの啓蒙・普及について、日本障がい者スポーツ協会が補助を行い、障害者スポーツの大会や競技種目を紹介するためのコンテンツを作成し、同協会のホームページに掲載している。  現在、パラリンピックが開催されているので、大会での映像資料を活用した動画を含めて障害者スポーツの普及啓発に努めていきたい。 (橋井常務理事)  障害者スポーツの紹介では、視覚障害者のための解説放送や聴覚障害者のための手話や字幕の表示等はされているのか。また、紹介動画等を各地域に伝える際に文章等で周知しているのか。 (健康スポーツ課 片山)  障害者スポーツの普及啓発において障害者への配慮が足りていないことは、スポーツ庁、日本障がい者スポーツ協会共に認識している。現在、音声等でも見られるように整備を進めている。 (橋井常務理事)  誰でも共有して視聴できるものに助成を行うべきだと思う。必要な配慮がなされていないものには、補助金等を出さないやり方もあるのではないか。検討してほしい。 (三宅部長)  パラリンピックスポーツの普及啓発も引き続き行ってほしいが、パラリンピックばかりを重要視せず、パラリンピックの種目には含まれていない視覚障害者スポーツ、例えば、グランドソフトボールや卓球、フロアバレー等の普及啓発も進めてほしい。  また、地域の人たちと一緒にプレイできるようにした障害者スポーツの普及活動もしてほしい。 (健康スポーツ課 片山)  日本障がい者スポーツ協会とは、今回のパラリンピックを活用しつつ、加盟登録団体のそれぞれの良さや培ったものを広げていこうと考えている。今回伺ったことも盛り込んでいこうと思う。 (4)スポーツ施設やジムにおける障害者への合理的配慮の提供義務を周知・徹底すること。 (健康スポーツ課 岡川)  平成27年に文部科学省で「文部科学省所管事業分野における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針」を策定し、文部科学省のホームページに掲載し、各自治体に配布した。内容は、関係事業者が事業を行うにあたり、障害を理由として障害者の利益を侵害してはならないことや、障害者やその関係者からの相談に適切に対応し、研修等を通じて障害者差別解消法の趣旨の普及を図り、障害に関する理解を深めることが重要であるとしている。  スポーツ庁でもこれに関連して、令和元年2月4日にスポーツ施設管理者向けに「スポーツ施設管理者のための障がい者対応講習会」を行い、障害者差別解消法の趣旨や合理的配慮の提供義務について周知を行った。 (橋井常務理事)  講習会の参加者はどのくらいなのか。また、講習会には各障害当事者は出席したのか。 (健康スポーツ課 岡川)  参加者数については正確な数は把握していないが、60~70名程度は参加している。 (橋井常務理事)  その参加者数は少なすぎると思う。自治体単位で行うことはないのか。 (施設係長 岡川)  スポーツ庁としては、参加者を通じてさらに周知を図っていくという形で行ったので、回答した講習会のみしか開催していない。 (橋井常務理事)  私の住む名古屋市では、障害者を含めた市民にスポーツ活動をしてもらうため、スポーツ市民局という部署ができた。しかし、そこからそのような講習会が開かれたということは聞いていない。周知の方に力を入れるべきではないか。 (三宅部長)  コロナ禍では、人が集まってスポーツをすることが難しい。そのため、視覚障害者も一人で運動することになり、ジムへ通うことが多くなったのだが、指導員がいなかったり、介助者を連れての使用を断られたり、器具の使用の制限がかけられたという声を聞いている。理由を聞いてみると、直接的な表現は使わないが、障害者への安全を確保できないからだという。そのため、視覚障害者が安全に使える器具に関しては、いつでも使用できるようにしてほしい。  またコロナ禍だと、障害者スポーツセンターが予約でいっぱいだったり、そもそも通うことに抵抗があったりする人もいるので、近所のスポーツ施設で合理的配慮を受けながら施設利用ができるようにスポーツ施設に周知を徹底してほしい。 (5)公的なスポーツ施設に障害者へのサポートを主任務とするスタッフを常駐させること。 (施設係長 岡川)  公的スポーツ施設へのスタッフの配置については、各自治体が判断することになるので、国から義務付けることはできない。そのため、スポーツ庁では、引き続き、「文部科学省所管事業分野における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針」を周知し、各自治体に対応してもらうよう促していく。  なお、令和3年度からは、障害者差別解消法の改正が行われた。その際に民間事業者の合理的配慮の提供が努力義務から義務に引き上げられたので、自治体も法の趣旨に基づいて対応するものと考えている。 (橋井常務理事)  一般の公的なスポーツセンターでは、まだ障害者の認識度が低く、対応があまりよくない。そもそもバリアフリーになっていない所もある。障害者差別解消法に基づく対応要領も知らない所もあり、指定管理者制度になり、職員が限られるので対応できないと言われる所もある。  このような所があるので、指針や通知を出すだけではなく、障害者の対応ができるスタッフやボランティア、設備の準備に助成はできないか。  また、一般の方と障害者が一緒にスポーツをすることで障害者理解が深まると思うので、検討してほしい。 (三宅部長)  障害者スポーツの支援員を派遣する制度があるので、その制度に対して助成を行うということもできると思う。身近なスポーツセンターでも支援が受けられるようにお願いしたい。 (6)「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律」(読書バリアフリー法)に基づいて、地方自治体が計画作成と予算化を進めるよう、国が地方自治体に指導すること。 (男女共同参画共生社会学習・安全課 阿部)  視覚障害者の読書環境を整備することは、重要であると考えている。文部科学省では、地方公共団体における読書バリアフリー計画策定を進めるため、計画策定に関する事務連絡を厚生労働省との連名で令和3年1月に発出し、計画策定の留意事項、施策の決定の勘案事項や障害者基本計画等の既存の計画においての読書バリアフリー項目の拡充について、地方公共団体へ周知を行った。  また、昨年度末には、都道府県、政令指定都市、中核市に対して計画策定状況等の調査を行い、5府県の策定済みの計画を策定事例として文部科学省ホームページに掲載している。今後も文部科学省として関係省庁と連携を図りつつ、地方公共団体における計画策定や予算化について働きかけていきたいと考えている。 (地域学習推進課 近藤)  地域学習推進課としては、予算事業の1つで、読書バリアフリーコンソーシアム等の設置により、地方公共団体における読書環境整備の計画策定を推進している。また、3月に作成し、ホームページ上にも掲載している読書バリアフリー法の啓発用リーフレットについては、9月中旬頃を目途に各都道府県に送付予定となっている。 (橋井常務理事)  読書バリアフリー基本計画について、自治体ごとに差が出てきている。文部科学省から自治体に対して、基本計画を作成する旨の指導等は行っているのか。 (男女共同参画共生社会学習・安全課 柴﨑)  読書バリアフリー基本計画については、自治体ごとに実情が異なるので、地域の実情に応じて各自治体が計画を取りまとめることになっている。自治体によっては、単独で読書バリアフリー基本計画を策定する自治体もあれば、障害者施策の基本計画の1つとして位置付けている自治体もある。 (橋井常務理事)  読書バリアフリー基本計画の策定に地域差が出てしまうと、日常生活用具の給付に地域間格差が生じてしまうことを危惧している。 (男女共同参画共生社会学習・安全課 柴﨑)  自治体には、厚生労働省の日常生活用具給付等事業を参考にしつつ、同様に地域間格差が出ないようにしてほしいと考えている。 (三宅部長)  厚生労働省の日常生活用具給付等事業では地域間格差が発生しないように、当団体でも働きかけを行っているが、実際には自治体が動いていないという実情がある。そのため、読書バリアフリー基本計画を全国で推進する上では、各自治体で差が出ないように、文部科学省、厚生労働省が連携する必要がある。  そこで、基本計画の策定をしていない自治体が前向きになるため、すでにできている5府県の基本計画を参考に紹介するよう、文部科学省、厚生労働省が連携した取り組みをしてほしい。また、計画策定時には各自治体の当事者団体を巻き込んで策定してほしい。 58ページ 05 国土交通省 1.日時  令和3年8月31日(火) 11時00分~12時00分 2.場所  オンライン 3.出席者 (1)日本視覚障害者団体連合                      会長  竹下 義樹                    常務理事  橋井 正喜                    組織部長  三宅 隆                     事務局  木村 幸平 (2)国土交通省  大臣官房総務課            総務係  安達  総合政策局   バリアフリー政策課         調整官  北小路                     専門官  稲田                      補佐  山尾  都市局   街路交通施設課         企画専門官  大友  鉄道局   都市鉄道政策課           専門官  福本   技術企画課              係長  猪木   鉄道サービス制作室        課長補佐  中島  道路局   高速道路課                  佐瀬  住宅局   参事官(建築企画)付       課長補佐  池町 4.陳情項目、回答、意見交換 (1)視覚障害者誘導用ブロックや階段の段鼻の色は、視覚障害者誘導用ブロック設置指針に基づくものにすること。 (バリアフリー政策課 北小路)  建築設計標準において、視覚障害者誘導用ブロック等については黄色を原則とすること、視覚障害者誘導用ブロックと周囲の床面との明度、色相、彩度の差が大きいことにより容易に識別できるものとすること、場所により視覚障害者誘導用ブロック等の色が異なることによる利用者の混乱をなくすため、なるべく色を統一すること等を定めている。  また、公共交通機関の旅客施設については、バリアフリー整備ガイドライン旅客施設編において、視覚障害者誘導用ブロックの色彩は黄色を原則とすること、敷設方法は旅客施設と公共用通路との境界は旅客施設内外から連続するように設置し、色彩や形状の統一に配慮することが望ましいとしている。階段の段鼻については、全長に渡って周囲の部分との色の明度、色相等、コントラストを大きくすることで段位を容易に識別できるようにすること、段鼻の色は始まりの段から終わりの段まで統一されたものとすることが定められている。  引き続き、ガイドライン等の普及を通じて周知を図り、地方公共団体に対しては、視覚障害者誘導用ブロック設置基準に基づく整備をお願いすることで、バリアフリーの促進を図っていきたいと考えている。 (竹下会長)  最近、JIS規格に則っていない視覚障害者誘導用ブロックが見受けられる。例えば、熊本市の駅前と新潟市の駅前では視覚障害者誘導用ブロックの色について、基準が守られていなく、地域の視覚障害者から「危険である」、「分かりにくい」という報告がある。そのため、JIS規格に則ったものにするよう、全国の自治体、事業者に周知徹底してほしい。 (バリアフリー政策課 北小路)  地方のニーズは、移動等円滑化評価会議の地域分科会で当事者からの意見を聞き、そこで指摘された点について検討していきたい。 (三宅部長)  山手線高輪ゲートウェイ駅において、木目調の淡い色の床に新しい色の視覚障害者誘導用ブロックが敷設されている。そのため、視覚障害者の中には、目印として使いにくいとの声が寄せられている。  また、駅構内はこのようになっているが、施設外はJIS規格外の視覚障害者誘導用ブロックが使われており、連続性がなく、安全安心に使えるか疑問が残る。  当事者団体の声を聞くことなく、議論を進めないようにしてもらい、視覚障害者誘導用ブロックの設置指針に合わせた、連続性のあるJIS規格に基づいた視覚障害者誘導用ブロックの敷設を各事業者へ指導してほしい。 (2)公共交通機関が不十分な地域においては、視覚障害者が安全に安心して移動できる施策を検討すること。 (バリアフリー政策課 北小路)  平成30年に改正されたバリアフリー法に基づいて、高齢者、障害者等の当事者団体、地方公共団体、施設設置管理者、有識者が参画する移動等円滑化評価会議というものが設置されている。当該会議では、各地域における高齢者、障害者等のニーズをきめ細かに把握、収集するため、全国10ブロックにおいて、地域分科会を設置し、1年に1回開催している。また、当事者団体からの要望も踏まえ、一部の地域ブロックにおいては、地域の有識者や障害当事者が参画し、現地施設の視察やテーマを絞った意見交換会も行っている。  なお、バリアフリー法の基本方針に定める、令和3年度からの新たなバリアフリー整備目標においては、1日の利用者が3,000人未満の駅も対象に含める等、地方における公共交通機関のバリアフリーも推進している。  こうした地域分科会やバリアフリー整備目標を通じて、公共交通機関が不十分な地域も含めてバリアフリー化の進展の状況を適切に把握、評価し、すべての高齢者、障害者が安全に移動できるように引き続き取り組んでいきたい。 (竹下会長)  中山間地域では、電車、バスの公共交通機関が廃止され、その地域に住む視覚障害者は移動しづらくなっている。移動を円滑化するためには、中山間地域において、コミュニティバスやオンデマンドの交通機関、乗合タクシー等、地域の特性に応じた、公共性の高い、交通手段が確保できる制度を研究してほしい。 (バリアフリー政策課 北小路)  そもそも移動手段がないということが問題だと思う。しかし、移動手段の確保について、地域ごとに事情があるので、地域の意見を聞きながら検討していきたい。 (3)全ての駅ホームにホームドアやホーム柵を設置すること。 (都市鉄道政策課 福本)  ホームドアとホーム柵の設置は、視覚障害者等の鉄道利用者の安全において重要なものと認識している。しかし、整備に関して多額の費用が掛かることから、整備目標や優先順位を適切に定め、計画的に整備を進める必要がある。昨年12月に公表した令和3年度からの新たなバリアフリー整備目標において、転落、接触事故の発生状況やプラットフォームを始めとする鉄軌道の構造及び利用の実態、地域の実情を勘案して、優先度の高いプラットフォームへの整備の加速化を目指し、地域の支援の下、令和7年度までに3,000番線を整備することとしている。  一方この目標を達成するためには、国や地方に予算制約がある中で、ホームドア整備のための財源の確保が課題となっている。こうした状況を踏まえ、今年5月に閣議決定された第2次交通政策基本計画において、ホームドア整備等の鉄道駅のバリアフリー化は、都市部において、利用者から薄く広く負担を得て整備を進める枠組みを構築するとともに、地方においては、既存の支援措置を重点化するとの方向性が示された。  今後は、第2次交通政策基本計画に則り、必要となる財源に関して、幅広く意見を聞きながら、具体的な検討を深め、関係者との調整を進めるとともに、予算の確保にも努めていきたいと考えている。 (橋井常務理事)  島式の駅ホームにおいて、片側のみにホームドアまたはホーム柵が設置されている状態は、反対側のホームにホームドアがあるものと勘違いしてしまう可能性があり、非常に危ない。設置する際は上りと下り、両方に設置してほしい。 (都市鉄道政策課 福本)  島式の駅ホームについては、上りと下りの両方にホームドアを設置した方が望ましいとは考えている。ただ、鉄道会社各社の事情もあり、初めてホームドアを設置する鉄道会社は試験的に設置し経過を見ることがある。今後、島式の駅ホームへのホームドア設置の際には、同時に両側に設置するようにしていきたい。 (竹下会長)  財源確保の試みの1つとして、駅の安全対策にかかる経費を全ての利用者に広く負担してもらうことを検討していると思う。このことについては、我々は歓迎している。具体的には、いつごろから始まるのか。 (都市鉄道政策課 福本)  現在、幅広く意見を集め、慎重に検討を進めている状態であり、具体的な日付までは決まっていない。調整ができ次第公表したい。 (4)全ての駅ホームに内方線付き点状ブロックを設置すること。 (技術企画課 猪木)  駅ホームの転落事故防止については、視覚障害者を始め、すべての利用者にとって重要な課題であると認識している。平成30年3月にはバリアフリー法に基づく移動等円滑化基準(省令)の改正により、駅の新設や大規模改良を行う際には、プラットフォームにホームドアまたは内方線付き点状ブロックの設置を義務付けた。また、既存駅についてもホームドアまたは内方線付き点状ブロックの設置が努力義務となった。  国土交通省としては、バリアフリー法に基づく移動等円滑化基準に基づいて、内方線付き点状ブロック等の整備について、鉄道事業者に適切に指導していきたいと思う。 (5)視覚障害者のホーム転落事故を防止するため、適正な駅職員を配置し、列車乗務員を含め、声掛けの徹底等、ソフト面の対策を一層強化すること。 (鉄道サービス制作室 中島)  駅員、乗客による声掛けについては、毎年全国の鉄道事業者と障害者団体等が連携して「声かけ・サポート運動強化キャンペーン」を行い、理解が深まるよう取り組んでいる。 (三宅部長)  ここ最近、コロナ禍の感染防止対策として、改札口を入口用と出口用に分けたために、視覚障害者誘導用ブロックを頼りに改札に向かったら、自分の向かう方向とは逆の改札だったということがある。その際は係員が案内してくれるようなソフト面での対応をお願いしたい。  また、感染防止対策として、係員の窓口が閉められていることがある。そのため、係員がいることに気が付かないというようなことがある。さらに、窓口の中にいる係員に乗り越し精算を頼むと、介助者の有無に関わらず、乗り越し用の機械に案内され、駅員に対応してもらえないことがある。不便を感じているので、駅員が直接対応するように鉄道会社への指導をお願いしたい。 (6)全ての駅において視覚障害者への積極的な声掛けの推進と、歩きスマホの禁止を啓発することを徹底すること。 (鉄道サービス制作室 中島)  歩きスマホは、視覚障害者にとって極めて危険な行為であることから、鉄道事業者や携帯電話業者等において、「やめましょう、歩きスマホ。」キャンペーンを実施している。また、国土交通省においては鉄道事業者や警察庁との間で、迷惑行為に関する連絡会議を開催し、連携を取っている。引き続き、歩きスマホをなくしていく取り組みを進めていく。 (三宅部長)  国土交通省、鉄道事業者が共に啓発活動をなされていることは承知している。しかし、歩きスマホをしている人が視覚障害者誘導用ブロックを利用して、視覚障害者と衝突するという事故も起きている。そのため、啓発活動だけではなく、歩きスマホをしている人への積極的な声かけや注意を行い、視覚障害者の安全な利用を確保してほしい。 (鉄道サービス制作室 中島)  歩きスマホの危険性については承知している。迷惑行為に関する連絡会議において、どのようにして歩きスマホをしている人に危険性を理解してもらうのか、鉄道事業者等と協議していきたい。 (7)視覚障害者が鉄道無人駅のホームを安全に移動できるようにするため、安全対策を総合的に検討すること。 (鉄道サービス制作室 中島)  昨年11月より、日視連にも協力いただき、無人駅の安全対策等に関する議論を進めている。引き続き、意見、要望を聞きながら、無人駅を安全、円滑に利用できるように方策を検討する他、新技術を活用した駅ホームにおける視覚障害者の安全対策検討会とも連携して対応したいと考えている。  国土交通省としては、鉄道事業者の利用実態を踏まえた上で、視覚障害者を含め、すべての利用者が安全安心に利用できるよう、取り組んで行きたい。 (竹下会長)  無人駅について、駅員を配置してほしいという声が多いが、人件費等の問題から無人化は避けられないものと思っている。しかし、無人化された駅にこそ、安全対策は必要なので、転落防止柵等のハード面の確立と地域住民を含んだ協力を検討してほしい。 (鉄道サービス制作室 中島)  無人駅自体がなくなってしまっては元も子もないので、いかに存続させつつ、安全対策を講じていくかが重要だと思う。  車いすでの介助の例となるが、地元の観光協会の人が無人駅に常駐したり、事前連絡をもらい、介助を行うことを実施したりしている。自治体で行っていることの一例であるが、これらを参考にし、検討会にて議論していきたい。 (橋井常務理事)  時間帯によって無人となる駅についても検討してほしい。視覚障害者は駅で駅員に行き先等を聞くことが多いのだが、知らないうちに無人になっている駅があり困ることがあるので、対応してほしい。 (鉄道サービス制作室 中島)  時間帯によって無人になる駅についても検討会で議論されている。時間帯によって無人になることの情報提供の仕方や無人の際の対応の仕方についても検討会で意見を聞きながら、鉄道事業者とともに検討していきたい。 (三宅部長)  新技術等を活用した駅ホームにおける視覚障害者の安全対策検討会で議論されている新技術も活用できると思う。単独の視覚障害者が無人駅で行動できる誘導の仕組み、どこに視覚障害者誘導用ブロックを敷くのが適切なのかも含めて検討してほしい。 (8)障害者本人と介助者それぞれが利用できる、障害者割引に対応した交通系ICカードを開発すること。 (バリアフリー政策課 稲田)  まず、障害者割引に対応した交通系ICカードについては、関西圏や九州で導入されており、同行している介助者にも適応されている。  そして、要望の大きかった、関東圏のSuicaやPASMOへの割引の適用については、導入に向けた働きかけを国土交通省から事業者に対して行ってきた。その結果、令和4年度後半を目途に障害者割引が適用される新たなICカードの導入を検討している。  国土交通省としては、実現のための検討を加速させ、事業者とともに連携を図り、取り組んでいく。 (竹下会長)  その情報は視覚障害者にとって朗報だ。ご配慮いただきありがとうございます。  ただ、関西では、同じICカードでも事業者によっては使えないところがあり、不便である。そのため、全ての鉄道駅でどのICカードでも使えるようにユニバーサル化を進めてほしい。 (バリアフリー政策課 稲田)  SuicaやPASMOについてはある程度、全国で共通化が図られている。今後全国各地に導入される際、開発コストもあるので、ある程度、共通化がなされたものが開発されるのではないかと期待している。国土交通省としても関東圏に限らず、全国に広まるように働きかけを行っていきたいと考えている。 (9)有料道路では障害者手帳を提示することで、有料道路割引制度を利用できるようにすること。 (高速道路課 佐瀬)  有料道路における障害者割引制度は、車を日常的に使用する必要のある人の社会的自立を支援するためのものであるが、有料道路料金は、車両に料金が適用される形になっているため、日常生活で使う車1台を対象としている。  しかし、1人1台要件の見直しについては、日視連を始め、各障害者団体から同様の要望が挙げられていることを踏まえ、現在、要件を緩和する方向で高速道路会社と調整を開始した。自治体、関係団体との協議を進め、令和4年度中に運用ができるように調整している。 (橋井常務理事)  それは、画期的なことだと思う。また、視覚障害者は複数人で移動することが多いので、障害者が半数以上乗車しているバス等にも割引できるような取り組みをしてほしい。 (高速道路課 佐瀬)  高速道路の割引分は、全体の収益から高速道路会社が割引分を補填する形になっている。そのため、日常的な利用を超える部分については、慎重な検討が必要かと思う。ただ、10人以下の乗用車等については、現状でも割引を認めているので、工夫ができるかもしてない。 (10)道の駅や鉄道駅等のバリアフリートイレは、洋式便器横に音声案内装置を備え、視覚障害者も利用できるよう整備すること。 (バリアフリー政策課 山尾)  令和2年度に実施した「共生社会におけるトイレの環境整備に関する調査研究」において、音声案内装置について、トイレの入り口での案内のみならず、便所内の設備案内等も音声案内とすることが望ましいとしている。この内容は、様々なガイドラインに反映されており、引き続き施設設置管理者等に調査研究の内容について周知を図ることを考えている。  なお、道の駅を含む道路のバリアフリー化においても、現在、策定している道路のバリアフリーに関するガイドラインに今回の研究の内容を盛り込む予定となっている。 (11)エスカレーターを歩行することの危険性について、より積極的な啓発をすること。 (参事官(建築企画)付課長補佐 池町)  エスカレーターを歩行することは、自身でバランスを崩したり、他の利用者と接触して転倒させてしまったり等のリスクがある。日本エレベーター協会が令和2年度に行った、安全利用キャンペーンのアンケートによると、エスカレーターの利用について、人やカバン等にぶつかり、危険を感じたことがある、と回答した人は全体の57.2%だった。  国土交通省としては、日本エレベーター協会と連携して「やさしい思いやりをありがとうキャンペーン」を行い、全ての方が安心してエスカレーターを利用できるようポスターや車内広告での広報活動を行っている。また、全国の鉄道事業者、商業施設、空港等と共に「歩かず立ち止まろうキャンペーン」として、エスカレーターに乗る際には、立ち止まること、手すりに摑まることを呼びかけ、エスカレーターでの歩行の危険性についての呼びかけを行っている。  一方で、エスカレーターの管理責任を有する所有者や管理者へ安全な利用を促していくことも重要であると考えている。平成28年に策定された、「昇降機の適切な維持管理に関する指針」において、利用者に安全な利用を促すことを所有者、管理者の責任として明記し、普及に努めている。今後も関係団体を通じて、エスカレーター利用の安全利用の啓発を続けていく。 68ページ 06 警察庁 1.日時  令和3年8月23日(月) 13時00分~14時00分 2.場所  オンライン 3.出席者 (1)日本視覚障害者団体連合                     副会長  佐々木 宗雅                    組織部長  三宅 隆                     事務局  佐藤 絵里 (2)警察庁  交通局交通規制課                宮島                          人見                          大橋                          藤岡 4.陳情項目、回答、意見 (1)夜間や早朝の音響式信号機が稼働していない時間帯に、青信号を確認できる装置や、同一時間帯に動作可能な歩行時間延長信号機用小型送信機対応の音響式信号機を全国に普及させること。 (交通局交通規制課 宮島)  音響式信号機の設置については、視覚障害者の方々の要望はもとより、付近住民の理解も必要であり、その稼働時間や音量については、交差点ごとに視覚障害者の通行の状況や付近住民の生活環境への影響等を総合的に勘案しながら判断して運用している。  警察庁としては、引き続き、視覚障害者と付近住民の方々双方の理解を得ながら、道路利用者が安全に道路を利用できる環境の整備に向け、適切な稼働時間、音量で音響式信号機を運用する他、高度化PICSの整備や、押しボタン等の操作時のみ動作する機能も活用していくよう、都道府県警察を指導していく。 (三宅部長)  平成30年に発生した駒込の事故を受けて日視連が警察庁に要望書を提出し意見交換をした際に、当時の担当者から、音響式信号機を各地に設置する場合、各都道府県警としてはそれぞれの地域から「この交差点に音響式信号機を設置してほしい」と具体的な要望があると検討しやすいという話があった。  日視連からも各加盟団体には、設置してほしいという意見が地域で高まった際には、最寄りの都道府県警に要望するよう伝えている。各都道府県警から、そのような要望が届くようになったという報告があるのか。 (交通局交通規制課 宮島)  そういった要望は警察庁には来ていない。要望が来ているのか、増えているのか、もしくは今までと変わらないのかは把握していない。 (三宅部長)  設置の要望がある際は最寄りの各都道府県警に伝えるということは変わらないか。 (交通局交通規制課 宮島)  そうである。もし、例えば視覚障害者用付加装置を24時間鳴らしてほしい、時間延長してほしいという要望が個別具体的にあれば、最寄りの各警察署に伝えていただければと思う。 (2)スマートフォン対応の音響式信号機を増設すること。 (交通局交通規制課 宮島)  スマートフォンにより、視覚障害者の方々に信号の表示を音声等で提供する「歩行者等支援情報通信システム」を高度化PICSと呼んでいるが、これは令和2年度、宮城県、埼玉県、静岡県、三重県、福岡県に計66機整備された。令和3年度は、16都府県に計160機程度整備される予定である。  高度化PICSは、音響式の視覚障害者用付加装置を鳴動させることが困難な時間帯や場所において、付近住民の生活環境への影響を少なくできることから、令和4年度以降も引き続き整備を推進していきたいと考えている。 (佐々木副会長)  高度化PICSについては、現在、音響式装置の夜間早朝の代替装置としての利用が期待されているとのことだが、将来的には音響式信号機でない一般の信号機でも高度化PICSで色が分かるようになるのか。  まだ、高度化PICSが視覚障害者だけでなく、世の中であまり知られていないため、高度化PICSをよく理解している人は非常に少ないと思うが、もう少し高度化PICSの認識が進んでから一般の信号機でも使えるようになるのか。 (交通局交通規制課 大橋)  具体的な高度化PICSの設置場所については、都道府県警察が選定しているため、音響式信号機のない交差点であっても高度化PICSが設置されるということは十分にあると考えている。  高度化PICSがまだ始まって1年半くらいしか経っていないため、まだまだ認知度としては低い状態ではあると思う。警察庁としては高度化PICSに関する広報啓発等はしていきたいと考えているが、高度化PICS単体で設置するという所はすぐに多くなるということはないと思う。 (佐々木副会長)  私も高度化PICSの信号機を渡る体験をしたが、今の内容で音響式装置のない信号で使うのは正直怖いと思っている。音響式装置がない信号で高度化PICSを使えるようにするためには、視覚障害者の声を聞いて対応をしていただいた方が良いと思う。関係メーカーは、よいものだと考えて作っているとは思うが、視覚障害者の声を聞かないと、実際の利用の場面でずれが生じてしまう。ぜひ、視覚障害者の意見を取り入れた形で高度化PICSの幅を広げるようにしていただきたい。 (交通局交通規制課 大橋)  視覚障害者の方々の要望も聞きながら、警察庁としても対応していきたいと思う。 (3)歩車分離式交差点やラウンドアバウト(環状交差点)、歩行者先行の信号交差点には、音響式信号機やエスコートゾーンを付ける等の安全対策を講じること。また、高度化PICS対応の信号機を導入する際は、必ず従来型の音響システムを併用すること。 (交通局交通規制課 宮島)  歩者分離式信号機について、警察庁では、歩者分離式信号機のうち、スクランブル方式、歩行者専用現示方式の信号機に対して、音響式信号機を優先的に設置するよう都道府県警察を指導している。  音響式信号機の整備については、市町村が定める重点整備地区における駅、役所、病院等を結ぶ主要な生活関連経路を中心に実施している。  また、重点整備地区以外についても、視覚障害者の利用頻度が高い施設の周辺において、需要が見込まれる箇所から整備を進めている。  ラウンドアバウト(環状交差点)は、通行速度が低下するため、事故の被害が軽減する、いわゆる右直事故が無くなる、信号機が不要になることでの待ち時間の減少や、災害時の対応力が向上する等の効果が見込まれるが、視覚障害者の方にとって、横断するタイミングが分かりにくいとの意見があることは承知している。環状交差点については、信号がないことから、音声案内を流す装置は困難だが、今後も引き続き、道路管理者や関係機関と連携し、視覚障害者が安全に移動できる道路構造やエスコートゾーンを含めた対策に取り組んでいく。  高度化PICSについて、警察庁では、既に音響式信号機が整備されている交差点で、夜間等周囲への影響を少なくすることが必要な時間帯がある場合には、高度化PICSの整備を積極的に検討するよう都道府県警察を指導している。  歩行者先行の信号交差点について、歩行者の青信号を先出ししている交差点については、要望を踏まえつつ、個別具体の道路交通状況に即して必要な安全対策を講じていきたいと考えている。 (佐々木副会長)  高度化PICSについて、もう少し詳しく教えてほしい。陳情項目(2)の回答では、今年度160機程度整備される予定とのことだが、高度化PICS以外の押しボタン式や音響式信号機の代替装置はどの程度整備する予定なのか。 (交通局交通規制課 宮島)  代替装置の設置台数については、都道府県警察が考えてやっているため、どれだけ設置しているかというのは警察庁では把握していない。 (交通局交通規制課 藤岡)  令和4年度に各県がどの程度整備するかというのは、現在予算要求の最中のため、どの程度予算が付くかを踏まえながら、今後都道府県警察が検討していく。 (佐々木副会長)  高度化PICSが利用できる人は限定されるため、多くの視覚障害者が使える機器で代替するようなことは考えているのか。例えば、シグナルエイドは視覚障害者にとって使いやすいので、シグナルエイドで青信号がわかるようになってほしいという声が多くある。 (交通局交通規制課 宮島)  今のところ、押しボタン式の音響式信号機での対応を考えている。 (佐々木副会長)  高度化PICSは非常に良い装置だが、視覚障害者でスマートフォンを使える人は限られている。高度化PICSがあれば多くの視覚障害者が使えるということではないので、シグナルエイドのような簡便な端末で青信号が分かるといいと思う。 (三宅部長)  高度化PICSを普及させていく一方で、従来型の音響装置ものを付けてほしいという要望も出ている。高度化PICSを使える人は、その恩恵を受けられるが、そうじゃない人もいるため、高度化PICSだけを伸ばしていくのではなく、従来型のシグナルエイド等も含めて普及させていただきたい。 (佐々木副会長)  ラウンドアバウトについて、車が滞りなく動けるということで車が走行するのに非常に良い方法だが、視覚障害者は渡るのが難しい。エスコートゾーンの整備やそれ以外の安全策を講じるという回答だったが、エスコートゾーンの敷き方や信号機の代替装置等、地元の視覚障害者団体の意見を取り入れた形で整備していただきたい。 (交通局交通規制課 藤岡)  実際のラウンドアバウトの導入については、大阪府警で設置の際に地元の視覚障害者団体に立ち会っていただいた経験がある。全国的に全ての都道府県警でそうしているかは把握していないが、地元の方から要望があれば、意見を取り入れて整備していくものと承知している。 (4)信号機対応のスマートフォンアプリを使用して、視覚障害者が安全に道路を横断できるよう、各地域で必要な訓練が受けられる仕組みを構築すること。 (交通局交通規制課 宮島)  高度化PICSの運用を開始している宮城県警察、千葉県警察、静岡県警察、福岡県警察では、事前にスマートフォン対応のアプリの操作に関する説明会を実施している。引き続き、スマートフォン対応アプリの操作に関する説明会の実施について都道府県警察と連携して推進していきたいと考えている。 (三宅部長)  各都道府県警で体験会のような形で取り組んでいるとのことだが、ある一定の共通の内容のもとに体験会等を行っているのか。  もしバラバラだと、地域によって認識に差がでてくることも懸念されるため、統一的な内容のもとに体験会を行っていただきたい。  あるいは、警察庁が各県警の取り組みを集約していく形で好事例を集め、これから設置する所に、体験会等を通して視覚障害者に普及を図るよう指導していただきたい。 (交通局交通規制課 大橋)  各都道府県警察で視覚障害者の方々に対して実施した説明会の内容については、個別具体的な所までは警察庁では把握できていないが、基本的に視覚障害者や視覚障害者団体の方々の要望を踏まえて、メーカー等とも必要に応じて連携して対応しているものと認識している。  今後は、他の好事例といった取り組みについても、警察庁で集約して各都道府県警察に広めていきたいと考えている。 (三宅部長)  その際はぜひ、各都道府県や政令指定都市にある日視連の加盟団体にもお声がけいただき、連携して体験会を開催していただきたい。 (佐々木副会長)  各地で開かれる交通安全の教室について質問したい。教室を開く際に視覚障害者を講師として呼び、視覚障害者が道路を横断するときの配慮や注意点について講義することは可能か。  様々な新しいシステムが使われるようになり非常にうれしいが、やはり、他の見えている人からのサポートが非常に役立つ。一般の人で視覚障害者に対する対応の仕方を熟知している人もいれば、視覚障害者をサポートしたいけれどもやり方がわからない、声のかけ方がわからないという声もよく聞く。  見えている人からのサポートや助言が非常に役立つということや、信号を渡る際のサポート方法等について、ぜひ、一般の人に知っていただきたいので、交通安全教室の活用を進めてほしい。 (交通局交通規制課 人見)  交通安全教室については当課の所管ではないため、そういった要望があるということについては、所管している課に伝える。そういう教室の中で視覚障害者への注意事項、あるいは運転者等への注意喚起について、要望があった旨を伝える。 75ページ 07 経済産業省 1.日時  令和3年8月31日(火) 10時00分~10時45分 2.場所  オンライン 3.出席者 (1)日本視覚障害者団体連合                      会長  竹下 義樹                    常務理事  橋井 正喜                    組織部長  三宅 隆                     事務局  石原 慎太郎 (2)経済産業省  経済産業政策局経済社会政策室      係長  小林 春華  商務・サービスグループ   キャッシュレス推進室       課長補佐  金江 万裕   消費流通政策課          課長補佐  依田 圭司   商務情報政策局情報産業課     課長補佐  木村 鴻志 4.陳情項目、意見交換 ※経済産業省から陳情項目に対する回答はなく、陳情項目について担当者との意見交換を中心に実施した。以下では、その意見交換の内容を記載する。 (1)視覚障害者にも扱いやすい音声出力機能、拡大表示機能、ボタン等を備えたキャッシュレス端末、セルフレジ、ATMを開発するとともに、その普及を図ること。 (竹下会長)  今までガラケー等のボタン式の携帯電話を視覚障害者は便利に使ってきたが、ボタン式の携帯電話は近くなくなると聞いている。そのため、スマートフォン等のタッチパネル式の携帯電話が使いこなせないので不安に感じている者が高齢視覚障害者を中心に多い。まず、そのことを理解してほしい。 (三宅部長)  セルフレジやATM等は、視覚障害者が1人で操作するには不自由なので、メーカー担当者には対策を考えてほしい。  特にセルフレジについては、一部音声が流れるので、音声対応としているレジがあるが、視覚障害者にとって十分な音声対応のレジにはなっていない。視覚障害当事者の声を聞きながら製品開発に取り組んでいただきたい。 (キャッシュレス推進室 金江)  障害者のためのアクセシビリティの高い機器開発の重要性は認識している。そのため、業界各所に通知を行う。 (2)どのようなタッチパネルの機器にも音声出力を手がかりに操作できる機能を装備するよう、製造者に義務付けること。 (竹下会長)  タッチパネル式操作の機器は家電にも及び、視覚障害者にとって操作しづらいものが増えている。視覚障害当事者の声が何らかの形でメーカー側に届くような場やシステムを経済産業省で用意できないだろうか。  一例として、シャンプーボトルの識別化がある。これは、関係する業界団体が尽力して、各種ボトルの横に凹凸や凸線等を入れて識別できるようにしてくれた。その際、日視連とも会議を重ね、現在業界の統一的な規格となっている。そして副次的な効果として晴眼者にも使いやすいものとなり、ユニバーサルデザインの成功例だと思っている。  日視連が個々にメーカーや業界の団体を調べて声掛けを行ってもよいのだが、経済産業省から紹介してもらい、話し合う場を設けた方が効果的だと思う。ぜひ、我々の声がメーカー側に届くような方法や仕組みを作ってほしい。 (三宅部長)  飲食店のタッチパネル式の食券販売機、ファミリーレストラン等のタッチパネル式の注文機器についても視覚障害者単独では使いづらいという声を聞いている。また、最近では宅配ボックスがタッチパネル式になっており、利用できないとの声もあるので、その点も含めて、音声対応や拡大表示ができるように製品開発をしてほしい。 (情報産業課 木村)  技術の進歩の中で誰でも使えるようにすることは大事だと思う。経済産業省も企業と関係団体と連携して取り組んで行けるように尽力したい。 (3)公共性の高いスマートフォンアプリを視覚障害者が活用できるようにするため、アクセシビリティの確保を各事業者に指導すること。 (竹下会長)  AppleのiPhoneには視覚障害者向けの音声出力アプリ「ボイスオーバー」を全ての機種に標準搭載しており、利用のオンとオフもできるようになっている。わざわざ視覚障害者向けのものを探さずに購入できるというものはありがたく、このような形のものがより一般化しないかと思っている。  音声で案内したり、拡大文字として表示したりすることは、技術的には難しくないと聞いているので、障害者のアクセシビリティについて、メーカーの技術者に知ってもらうことはできないか。 (三宅部長)  視覚障害者のスマートフォン利用者が増えてきていることをメーカーには知ってほしい。また、Appleでは音声出力アプリが基本搭載されていることや文字の拡大表示ができることを知った上で開発するよう、経済産業省から働きかけてほしい。 (情報産業課 木村)  スマートフォンは社会インフラであると考えているので、誰もが利用できるようにしておくことが重要であると考えている。経済産業省としてもJIS規格等の改正を行い、アクセシビリティの高いスマートフォンが普及するよう努めている。  特にニュースアプリやラジオアプリのような公共性の高いものについては、よりバリアフリーが進むように助成や障害者団体とも意見交換を行い、改善に取り組んでいきたい。 (4)音声ガイド付き家電製品を視覚障害者が入手しやすくするため、適正な価格で購入できるよう助成を行うこと。 (竹下会長)  厚生労働省の日常生活用具給付等事業では、障害者にとってユーザビリティの高いものの給付または貸与を行っている。先ほど、どのような機器でもアクセシビリティを担保してほしいと要望したが、その結果、機器の値段が上がってしまうのは視覚障害者にとって苦しいものである。そのため、開発したアクセシビリティの高い家電を視覚障害者が購入できるように助成等を行ってほしい。 (情報産業課 木村)  厚生労働省の日常生活用具給付等事業については承知している。陳情についてはもっともだと思うので、政府一丸となって取り組んでいきたい。 (5)カセットテープの製造が存続するよう指導すること。 (竹下会長)  アナログ時代が終わろうとしていることは承知しているが、カセットテープによる情報提供を望んでいる視覚障害者はかなり存在する。  総務省の話になるが、選挙のお知らせは、選挙公報の内容を点字版、音声版、拡大文字版にして交付しているが、音声版を希望する視覚障害者の一部がCDでなく、カセットテープでの交付を希望している。  しかし、カセットテープの確保が難しくなっている。現在、選挙のお知らせのカセットテープ版は、日本盲人福祉委員会がメーカーにカセットテープを予約して確保することで何とか繋いでいる状況である。見通しが立たない状況となっているので陳情項目とした。 (情報産業課 木村)  ニーズがあることをメーカーに伝える。 (竹下会長)  日視連としてもカセットテープからCDへ切り替えができるよう指導をしているので、切り替えが終わるまで、維持していただきたい。 (6)キャッシュレス化・セルフレジ化したスーパー・コンビニ等では、視覚障害者が一人でも利用できるようにするため、支援者を配置するか、店員対応のレジを残すよう指導すること。 (7)百貨店やスーパー、各種量販店やコンビニ等に、買い物サポーターを常駐させるよう指導すること。 (三宅部長)  これは陳情項目(1)と(2)にも係る要望になる。まず、無人レジ等が増えているが、有人による対応も確保しておいてほしい。有人レジを用意するか、無人レジのサポートをする人を用意するかして従来通り買い物ができるようにしてほしい。国土交通省が令和3年3月に改正し建築設計標準の中でも、商業店舗は、サービス面において適切に対応する旨が盛り込まれているので、店舗等に指導するよう、お願いする。 (竹下会長)  無人化というのは、1つの社会の流れになると思う。今年の5月に障害者差別解消法が改正され、第8条2項において、民間事業者においても合理的配慮の提供が法的義務化された。陳情項目(6)と(7)に関しては、合理的配慮に当てはまると思うので、その点を加味して検討してほしい。 (消費流通政策課 依田)  小売業界では、障害者も利用できるサービス提供の在り方を模索しており、テクノロジーの活用と従来の有人でのサービス提供をどうするか試行錯誤している。経済産業省としても有人でのサービスをできる限り残すよう、逐次通知を出している。今回の陳情についてもしっかり伝えていきたい。  特に視覚障害者が不便を感じることなく買い物をすることができるようにすることは、経済産業省も小売業界も重要なことであると認識している。大手のスーパーではハード面のバリアフリーだけではなく、スタッフからのサポートを充実させている。他にも、特定の時間帯のみ障害者の買い物を優先させる店舗等がある。また、業界団体と経済産業省でソフト面から接客マニュアルを策定し、業界内の社会教育を図っている。 (橋井常務理事)  コンビニ等のレジでは外国人の店員が多くなっている。視覚障害者は、買い物の際に店員にいろいろと尋ねたりするのだが、外国人の店員だと思うようにコミュニケーションが取れず困ることが多い。地元の小売業界に話を聞くと、人手不足、高齢の日本人では機械を使いこなせないため、仕方がないということなので、研修等、徹底することで改善をしてほしい。 (消費流通政策課 依田)  経済産業省としても問題として把握しており、コンビニ業界と意見交換を行った。コンビニで働く外国人は全体の10%ほどではあるが、都心部に多いという状況であり、指摘いただいた点はコンビニ業界にも伝えたい。 (8)視覚障害者に有用なスマートフォンアプリ開発促進のために、国がコンテストを開催する等の啓発活動に取り組むこと。 (竹下会長)  地方からの声では、日視連が経済産業省から依頼を受けて、コンテストを開くという企画をやれないかというものがあった。実際に日視連が審査をするのは難しいため、今回のような陳情の表現になった。ただ、我々にできることであれば、協力していきたい。国の方で何か取り組みはできないか。 (情報産業課 木村)  アプリに限定している話ではないが、社会課題を解決するベンチャー企業を支援するためのコンテストを開いている。陳情いただいた件については、民間企業を後押しできるよう検討していきたい。 (9)今後ますます進むキャッシュレス社会から視覚障害者が取り残されないよう、国は、視覚障害者が利用しやすいキャッシュレスの利用方法を開発し、その普及を図ること。 (竹下会長)  障害者割引が適用される交通系のICカードが関西を中心に使用されている。日視連は全国で使用できるように国土交通省や鉄道会社に毎年陳情していたが、令和4年度中に関東でも適用されるようになることが決まった。キャッシュレス化は視覚障害者にとっても便利な部分があるので、この便利さを享受できるようにしてほしい。費用は掛かるだろうが、効率を考えると損はないと思う。 (キャッシュレス推進室 金江)  キャッシュレス化を進めるにあたって、障害者が取り残されないように環境を整備することは重要であると考えている。経済産業省としては業界団体である日本クレジット協会を通じてクレジットカード会社に対して、対応指針に則って適切に対応するように通知を行っている。  また、民間団体のキャッシュレス推進協議会は様々な団体からヒアリングを行い、ニーズや課題を整理している。キャッシュレスを利用するにあたって、どのように金額を表示すればいいのか、問い合わせ先の確保をどうしたらよいのか、といった工夫を考えているので、経済産業省も協力し、周知、広報を行っている。 (三宅部長)  キャッシュレスを使える環境を整えれば、視覚障害者が取り残されることなく利用できるので、視覚障害者からの関心も高い。このことは、話にあった協会や協議会にも視覚障害者の声として届けてほしい。また、金額の表示も必要であるが、残額の管理等も容易にできるようにして推進してほしい。 (竹下会長)  視覚障害者の声が届くかどうかは重要である。その上で、メーカー等にどのように届けるのか。各メーカーに足を運ぶことも厭わないが、開発後に足を運ぶことが多くなり、開発後の製品の変更となるとメーカーとしても負担も大きい。そのため、開発過程で関われるような仕組みができないかと考えている。経済産業省としても、その点について尽力してほしい。 82ページ 08 デジタル庁 1.日時  令和3年10月20日(水) 9時00分~9時30分 2.場所  オンライン 3.出席者 (1)日本視覚障害者団体連合                      会長  竹下 義樹                    常務理事  橋井 正喜                    組織部長  三宅 隆                     事務局  木村 幸平                     事務局  佐藤 絵里 (2)デジタル庁  国民向けサービスグループ   フロントサービス担当アクセシビリティ班                     参事官  山野  戦略組織グループ   総務担当総括班           企画官  石井   総務担当国会班                大里  国民向けサービスグループ   フロントサービス担当 アクセシビリティ班   大塚   フロントサービス総括             筧 4.陳情項目、回答、意見 (1)政府が進めるデジタル化については、視覚障害者のアクセシビリティにも配慮したうえでの施策を講じること。 (国民向けサービスグループ 山野)  デジタル庁は9月に立ち上がったばかりの新しい組織である。立ち上げに際して、デジタル庁がどのような社会を目指していくのかという、「ミッション・ビジョン・バリュー」と呼ばれる共通的な考え方を取りまとめて発表している。  その中で、デジタル庁の目的を一言で表した1番大きなミッションとして「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化を。」を掲げている。「誰一人取り残さない」というところには、障害のある人もない人も、また、高齢でデジタル技術に馴染みがない人も若い人も含まれており、あらゆる人々がデジタルの恩恵を活用することができる、温かいデジタル社会を作っていくことを1番の目標にしている。  現在、各省庁で取り組んでいることや、これから更に強化していかなければいけないことが山積みになっている。デジタル庁は出来上がったばかりの組織ではあるが、すでにいろいろなプロジェクトが立ち上がり始めている。そういったものに対して、デジタル庁として、視覚障害のある方も含めて、「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化社会」を作っていくという目標に向かい、関係省庁と連携して施策を作り、実行していきたいと考えている。 (竹下会長)  まず、数年後、電波帯が5Gに切り替わり、フィーチャーフォンがなくなることについて、全国の会員から懸念が示されている。  統計は取っていないが、視覚障害者のほとんどが携帯電話を使っており、その中の中高年齢層では、従来のフィーチャーフォンをそのまま使っている人が圧倒的に多い。これらの者は、視覚障害者にとってはデジタル化の象徴とも言えるスマートフォンに移行できない人が中心で、自分たちが使える携帯電話がなくなってしまうのではないかと不安になっている。この、コミュニケーションの大きな手段であり、視覚障害者にとっては死活問題になりかねない携帯電話の切り替えを、視覚障害者が取り残されないように意識していただきたい。 (戦略組織グループ 石井)  質問だが、ガラケーやフィーチャーフォンは、ボタンがあるから使いやすいということなのか。  総務省の施策ではあるが、デジタル活用支援員を携帯電話のショップ等に配置し、ユーザーの携帯電話に関する悩みに応える施策を推進している。まだ規模が足りていないかもしれないが、今後、携帯電話の技術の移り変わりや機器の開発状況に応じて、より使いやすいものを案内できるよう、施策の推進を進めていく。 (竹下会長)  恐らく、ボタンがあるというのは視覚障害者にとって大きな安心感になるし、逆にボタンが無くなることへの不安も大きいのだと思う。 (三宅部長)  携帯電話については、心配している視覚障害者が多い。今年、3Gのサービスが一部終わり、2026年に5Gが完全に実施される状態になった際には4Gも終了し、それによって従来の携帯が使えなくなってしまう。このような状況で、視覚障害者は取り残されてしまうのではないかという不安がある。この不安を払拭するために、総務省と連携して取り組んでいただきたい。 (橋井常務理事)  日視連の多くの会員から、視覚障害者がデジタル化の恩恵を受けられないという声が挙がっている。スマートフォンのアプリやスマートフォン決済のIT関係を一般の人は高齢者でも自由に使えていると聞いているが、視覚障害者はその機器を使いこなせておらず、このままでは日常生活を送ることができなくなってしまう。  「誰一人取り残さない」というキャッチフレーズがあるならば、こういった機器の開発等についても、各省庁に強い力で指導していただきたい。 (戦略組織グループ 石井)  デジタル庁の目指す社会は、短期的に実現できない部分もあり、スマートフォン等の機器に関しても、技術的にアクセシビリティの確保ができていない部分もあるかと思う。こういった機器の開発等について、デジタル庁として関係省庁と連携して取り組んでいきたいと考えている。 (2)ネットバンキングや各種サイトへの登録の際、ワンタイムパスワードや画像認証等、画像が介在する方式において、視覚障害者が単独でも手続きを完結できるように配慮されたシステム構築を促すよう指導すること。 (戦略組織グループ 石井)  デジタル庁は政府のデジタル社会の推進について、総合調整する立場であり、各業界に直接指導する権限はない。例えば、ネットバンキング等の銀行業に関しては、金融庁が指導する権限を有している。  一方でデジタル庁は、人に優しい、誰一人取り残さない、アクセシビリティがしっかり確保されたデジタル社会を目指していくために、総合調整する立場にある。ユーザーの観点から、誰一人取り残されないシステムを構築していけるように、関係する省庁と意見交換をしていきたい。  6月に政府で取りまとめた「デジタル社会の実現に向けた重点計画」の中に「アクセシビリティの確保」という項目を設けており、政府一体となってこういった施策を重点的に実現していくということを明記している。 (三宅部長)  画像認証は、徐々になくなってはいるはずだが、まだいろいろな省庁や関係機関のホームページで使われている。例えば、パブリックコメントだと最後に画像認証が求められ、オリンピックのチケットの購入の際はパズル認証が必要で、このような画像認証ができないと次のステップに進めず、最終的な目的を達せられない状況にある。このようなことで視覚障害者が取り残されるようなことがないように、十分な施策を講じていただきたい。 (竹下会長)  画像認証の問題は、ネットバンキングだけではなく日常生活の中にも広がりがあり、社会がどう変わるのかという怖さがある。例えば、電車に乗るために切符を1人で買えるのか、コンビニも無人化され、スーパーではレジが自動化されていく。日常のどの場面においても、社会は良い方向に向かっているのだろうが、視覚障害者はそのことで不安ばかりが募っていくのが、非常に辛い。だからといって社会の進歩を止めるような立場には立ちたくない。社会の進歩の中で障害者が不安にならないようにしていただきたい。  今後、ひとつひとつの壁にぶつかった際には、また声を届けられる窓口を設置していただき、デジタル庁が大いに力を発揮できる省庁になっていただきたい。 (戦略組織グループ 石井)  まだまだ行き届いていない部分があるということを痛感した。しっかりデジタル庁として取り組んでいきたい。  また、行政のデジタル化が進むことの1つの反射的利益として、行政サービスそのものが効率化されると、今まで業務に携わっていた人が、窓口で皆様のニーズに応える相談支援等の、別のサービスができるようになるのではないかと期待している。  まだ、行政自体のデジタル化が十分に進んでいないため、不便をかけるかもしれないが、行政サービスを効率化することによって、よりきめ細かなサービスが提供できるようになることを目指している。 (3)令和3年9月1日に創設予定のデジタル庁に、「視覚障害者ICT社会自立推進環境整備局(仮称)」というような施策推進局を設置すること。 (戦略組織グループ 石井)  デジタル社会というのは日進月歩で非常に歩みが早い業界であり、組織の体制を柔軟に変えられるように、デジタル庁には、あえて局や部という固まったものを作らないようにしている。そのため、他の省庁で局長と呼ばれる所には、統括官という名称の役職が設けられており、それぞれが今のデジタル社会の形成に必要なグループを作り、プロジェクトベースで必要な体制を集める形で、施策を進めている。  アクセシビリティの確保は重要な施策の1つであるため、デジタル庁の中で担当を決めて進めていく。 (竹下会長)  デジタル庁に着任した職員の中には、厚生労働省の障害福祉課長を歴任していた者が入ったと聞いた。こういった人は、障害者の実情や特性を理解していただいていると思っている。そういう人を含めて、視覚障害者が日々何に困っていて、各省庁にどのような要望があるか伝えられる、懇談の場を持たせてもらいたい。 (戦略組織グループ 石井)  その者は、国民向けサービスグループという、行政が国民に対して提供していくサービスの在り方について、企画立案等をする部署の責任者の一人である。この者には、障害者の特性等を理解すること等、これまでの経験等を踏まえ我々に指導していただいている。 (竹下会長)  また、2名の視覚障害者が非常勤の任用公務員でUI/UXアクセシビリティ担当としてデジタル庁に採用されたとも聞いた。この2人が我々の声を十分に代弁してくれると思うし、どういう形でその役割を果たしていくのか期待している。このような人達が各省庁の抱える問題を解決するために動けるようにしていただきたい。 (戦略組織グループ 石井)  UI/UXアクセシビリティ担当の2人を始めとして、障害のある人を積極的に採用し、デジタル庁の取り組みを進めてもらいたいと考えている。  なお、行政が行政サービスとして作っていくシステムに関しては、デジタル庁として直接、もしくは間接に関与していく。行政システムのアクセシビリティが確保されているのか、部内でしっかり企画立案することで、皆様の意見を聞いていきたいと思っている。このように、十分に声を聞きながら国民全ての皆様に使いやすいシステムを作っていきたいと思っている。 (三宅部長)  デジタル庁として、障害者のアクセシビリティに関して、ノウハウの蓄積をしていただきたい。システムを作る際に、最初から当事者が関われず、製品ができ上がってから意見を聞かれても変更ができず、視覚障害者はアクセスできないという状態になってしまう。マイナンバーやオリンピックのチケットの購入についてもそうだった。このようなことにならないように、開発の段階から当事者が関われるような仕組みを作るか、専門的な部署やグループをデジタル庁の中に作り、そこが他の省庁に示せるような形にしていただけると、いろいろなものがスムーズに進むのではないかと思う。 (戦略組織グループ 石井)  まだまだ行き届いていない部分はあるかと思うが、将来に対して不安を感じることのないような社会を作っていくべく、邁進していきたい。 88ページ 09 金融庁 1.日時  令和3年8月30日(月) 15時00分~15時30分 2.場所  オンライン 3.出席者 (1)日本視覚障害者団体連合                    常務理事  橋井 正喜                    組織部長  三宅 隆                     事務局  佐藤 絵里 (2)金融庁  監督局   銀行第一課              係長  宮尾 聡   銀行第二課              係長  三國 智久   協同組織金融室            係長  奥村 幸子   郵便貯金・保険監督参事官室      係長  山跡 達也   保険課                係長  平尾 拓也   証券課                係長  山口 裕士  総合政策局   資金決済モニタリング室        係長  水野 和哉 4.陳情項目、回答、意見 (1)視覚障害者に配慮したATMを導入するよう指導すること。 (監督局銀行第一課 宮尾)  監督指針において「視覚障害者対応ATMの増設等、視覚障害者からの要望等を踏まえた取り組みを積極的に推進するようように努めること」と記載する等、金融庁として銀行等に視覚障害者に配慮した金融サービスの提供を促している。  毎年、「障がい者等に配慮した取り組みに関するアンケート調査」を銀行等に対して実施しており、視覚障害者対応ATMの整備率は令和2年3月末において全体の約90%程度となっている。このうち、ハンドセット方式を備えたATMを設置済みの店舗が多くを占めている。そのため、引き続き銀行等との対話を通じて視覚障害者に配慮したATMの設置、改良について促していきたいと考えている。そして、視覚障害者対応のATMを設置済みの店舗に対しても視覚障害者が単独でもATMを操作できるように、障害者に寄り添った対応を行うことも促していきたいと考えている。 (橋井常務理事)  視覚障害者対応ATMの設置率が90%とのことだが、それは、銀行の1つのATMコーナーで1台設置しているということなのか、全てのATMが視覚障害者対応になっているのか。各銀行のATMコーナーは、1台の所もあれば複数台の所もあるので、教えてほしい。 (監督局銀行第一課 宮尾)  銀行によるとは思うが、ATMコーナーで全台視覚障害者対応のATMを導入しているところもあれば、一部の店舗では導入が進んでいないところもあるかと思う。 (橋井常務理事)  90%というと、100%に近いATMで障害者対応ができていると聞こえる。しかし、数台のみ視覚障害者対応のATMがあるところでは、ATMの列に並んでも、視覚障害者対応のATMに当たるとは限らない。できるだけ多くのATMが視覚障害者対応になるよう義務付けていただきたい。義務にするのが難しければ強く指導していただきたい。 (監督局銀行第一課 宮尾)  銀行でもコストの面もあり、キャッシュレスの波もあるため、義務付けることは難しいが、できるだけ100%に近づけるように引き続き促していきたいと考えている。 (三宅部長)  ほぼ90%のATMが視覚障害者対応の主にハンドセットのものとのことだが、それについて2点質問がある。  1点目、ハンドセット以外の視覚障害者対応ATMというのはどういうものなのか。  2点目、設置率は90%とのことだが、実際に設置されているが使えないものがある。しっかりとメンテナンスもされた上で適切に運用できているものはどこまで把握しているか。 (監督局銀行第一課 宮尾)  1点目について、多くがハンドセット方式となるが、それ以外だと、一部の金融機関にはなるが、キーボード方式や触覚記号方式を導入している店舗もあると承知している。  2点目について、現状、メンテナンス等をしっかりしているかというのはアンケートだけでは十分に把握しきれていない。そういった点も踏まえて、今後、対話等でしっかりとリサーチしていければと考えている。 (三宅部長)  通常、ATMは何らかの形で必ずメンテナンスはされていると思うが、実際に自分や自分の知り合いも体験した事例だと、ATMが8台並んでいるある店舗で、列に並んで自分の番が来て、ATMに行ったらハンドセットが断線していたようで使えず、隣に行くとプッシュホンの接触不良で音が聞こえないということがあった。数えていくと結局、8台中4台が使えなかった。  橋井からの要望にもあった通り、視覚障害者対応ATMを設置しただけでは不十分で、しっかりとメンテナンスをして、いつでも使える状態にすることが重要だ。この点については、今後の指導の所に、十分そのことを踏まえたものを入れていただくようお願いしたい。 (橋井常務理事)  店舗の銀行が無くなっていく中で、スーパーの店内や隣にあるようなキャッシュコーナー等が増えてきている。今後アンケートを行う際に、店舗の有無等の区分けをして調査すれば、どこに視覚障害者対応ATMがあるかがより分かるようになると思うので、今後の課題としていただきたい。 (三宅部長)  橋井の要望の関連になるが、駅等に設置されているATMを中心に視覚障害者対応になっていないものを見かけることがある。地方、都市銀行も含めて、店舗というスタイルが縮小されていく中で、いろいろな場面でATMが使われてくる。店舗に設置されているATMだけでなく、駅やデパート等のATMも視覚障害者対応ATMになるよう各金融機関へ指導していただきたい。 (監督局銀行第一課 宮尾)  いただいた意見を参考にしながら、引き続き取り組みを進めていきたい。 (2)今後ますます進むキャッシュレス社会から視覚障害者が取り残されないよう、国は、視覚障害者が利用しやすいキャッシュレスの利用方法を開発し、その普及を図ること。 (総合政策局資金決済モニタリング室 水野)  まず、キャッシュレスについて金融庁で所管しているのは前払式支払手段発行者と資金移動業者であり、クレジットカードは経済産業省の所管であることを承知いただきたい。  この前払式支払手段発行者と資金移動業者に対しては、事務ガイドラインにおいて障害者の対応にあたって利用者保護及び利用者の利便の観点を含め、障害者差別解消法や対応指針に則って適切に対応するように内部管理体制の整備を求めている。  その中で、一部の交通系ICカードの前払式支払手段発行者において、カードに切欠きを入れて他のプラスチックカードと区別しやすくする取り組みや音声ガイダンスに対応した券売機やチャージ機の設置を行っている事例も見られる。  金融庁としてはスマートフォン等の決済サービスを提供する前払式支払手段発行者と資金移動業者に対して障害者に配慮した取り組みがより一層充実するように、引き続き対応の向上を促していきたいと考えている。 (橋井常務理事)  コロナ禍で、ICカード等のキャッシュレス決済を使うことが多くなった。視覚障害者にとってキャッシュレスというのは、小銭や現金を持ち歩かなくてよいという面で大変便利だが、実際の操作はかなり苦労している。音声で対応できるようにする等、金融庁から各業者へ指導していただきたい。 (三宅部長)  決済方法に関して、支払う段階でカードをかざしたり預けたりすれば済むところもあれば、自分で支払い方法を選んで処理をしなければいけない場合もある。自分で支払方法をタッチパネルで選択して決済するとなると、タッチパネルの時点で1つバリアが出てくる。多くの視覚障害者はタッチパネルを見て操作することができない。そのため、経済産業省と連携を取り、視覚障害者が戸惑わずスムーズな決済ができるように配慮していただきたい。  また、キャッシュレスの支払い全体で課題となっているのが、視覚障害者がこれらの操作方法を体得できる機会がないことだ。視覚障害者の中でキャッシュレスの支払いが広く普及していかないのは、このようなところが要因となっている。昨年の陳情でも新しいATMが出た時等には体験会を行っていただきたいと申し上げたが、それと併せてキャッシュレス決済方法について、視覚障害者が使えるような仕組みがあれば、体験できる機会を作っていただきたい。 (総合政策局資金決済モニタリング室 水野)  いただいた意見を踏まえて、今後金融庁として何ができるのか、経済産業省と連携してどういったことができるのかについて検討していきたい。 (3)署名等を自署できない視覚障害者が保険の契約や金融機関での取引を行う場合、本人の意思を適切に確認したうえで、親族以外の第三者による署名等の代筆を認めるルールや制度を整備すること。 (監督局銀行第一課 宮尾)  監督指針において銀行等が自筆が困難な障害者等への代筆について職員等による代筆を可能とする旨の社内規定を整備し、十分な対応を行うよう定めている。例えば、「障がい者等に配慮した取り組みに関するアンケート調査」において、令和2年3月末の時点では、自筆困難者への代筆に関する内規を定めている金融機関は約99%となっている。また、親族以外の第三者としては、同居人やヘルパーの他、複数職員が確認することを前提に行員の対応を認めている金融機関も多く存在しており、対応が進んできているものと考えている。  銀行等の代筆の規程については、意見交換会や個別の対話を通じて引き続き整備を促していきたいと考えており、行員への規程等の浸透のため、障害者対応研修等の機会を通じて職員へ周知徹底するように引き続き促していければと考えている。 (橋井常務理事)  金融機関等で代筆・代読をしてもらえるようになっているとは思うが、依然として日視連の相談窓口には、1人では金融商品も買えない等、代筆・代読の支援が受けられない旨の相談が寄せられている。銀行によっては、同行するガイドヘルパーに代筆を頼むよう言われたり、ひどいと、ヘルパーの運転免許証を確認する等、きつい対応をする銀行もある。そういった配慮に関して、銀行としてマニュアルはあっても、窓口によってはマニュアルを見ておらず、代筆等の対応ができていないとの指摘もある。まずは、職員研修の中で周知徹底していただきたい。 (監督局銀行第一課 宮尾)  内規については整備が進んでいるものの、なかなか職員、行員に浸透が進んでいないということはあると思う。研修によっては障害者が講師となって応対等の心構えや基本姿勢、疑似体験等を盛り込んだものを開催した事例や、視覚障害者等が来店した場合の代筆・代読の対応のロールプレイングを実施している事例もある。そういった事例を他の金融機関等への周知等を通して、対応力の向上や内規の浸透といった点から引き続き対応を促していきたい。 (三宅部長)  毎年のようにこのような要望が加盟団体から挙がってくる。監督指針で定めていて、実際に内規は90%以上できているとはいえ、末端の行員、担当者が理解していないのか、その店舗あるいは銀行全体で取り組もうとしていないのか、こういった背景を整理すべきだと思う。取り組むことが難しいだとか、こういった理由で親族による代筆を求めなければいけない等があるのかを聴取し、課題を整理するだけでも解決の糸口が見つかるかもしれない。金融機関の考えを正直に言っていただく機会を設けていただきたい。 (監督局銀行第一課 宮尾)  金融機関によっては本人の判断力等に問題がある点等で対応が難しいとしている所もあるのかと思うが、どういった点がネックとなっているのかというのが非常に重要だと思っている。いただいた意見を参考にしながら進めていきたい。 94ページ 10 消費者庁 1.日時  令和3年8月23日(月) 15時30分~16時30分 2.場所  オンライン 3.出席者 (1)日本視覚障害者団体連合                     副会長  佐々木 宗雅                    組織部長  三宅 隆                     事務局  佐藤 絵里 (2)消費者庁  食品表示企画課           総括係長  國分 啓士郎                          一条 美和 4.陳情項目、回答、意見 (1)視覚障害者を含めた消費者の食の安全・安心を守るために、食品のパッケージに記載されている情報をQRコードまたはその他の方法で読み取りができるようにすること。その際、QRコード等の位置は、触ってわかるようにすること。 (食品表示企画課 一条)  消費者庁では、容器包装上において、非常に情報量が多くて読みづらく十分に活用されない食品表示は、安全性の面で問題なのではないかという指摘はすでに受けている。これを受けて、令和2年に「アプリケーションを活用した食品表示実証調査事業」を行い、実証事業を行った。その時に取り組んだのが、主に2つある。  1つは、実証用の食品表示のデータベースを作り、スマートフォンのアプリを合わせて構築するということ。容器包装上の表示をデジタルツールで代替することは可能か、技術的検証を行った。  もう1つは、スーパーで消費者モニターの方にアプリの機能で食品表示を確認いただいた。これを通じてデジタルツールによる食品表示に関する消費者のニーズを直接確認した。まだ一段階ということもあり、アプリでの食品表示の確認は、あくまで目で確認するという段階のものであるが、デジタルツールの活用について取り組んでいるところである。  ただ、今回、技術的な課題が浮かび上がっており、デジタルツールを使う大前提として、食品表示のデータのフォーマットや入力方式が各社でバラバラであることや、情報が入力されていてもそれが最新の状態に保たれていないこと等の技術的課題が明らかになった。  今後、音声の活用を含めたデジタルツール化を進めるためには、データやフォーマットを一元化することや、最新の状態に保っていくことが必要だと考えている。引き続き実態を詳細に把握すべく、食品業界の方々にヒアリング調査を行っていく。  また、今年度も実証に取り組みたいと考えているが、スマートフォンアプリ以外でのデータの利用方法の検討を併せて進めていきたいと考えている。その際に、提案いただいたQRコードでの読み取りや視覚障害のある方々にとっての分かりやすい表示の活用方法も将来的に検討していければと考えている。 (佐々木副会長)  QRコード等の利用については先の話になるということか。 (食品表示企画課 一条)  今回の実証事業自体は、もともと容器包装に記載されているバーコードを読み取り、スマートフォンのアプリでもっと分かりやすく表示しようとしたが、データでの管理が各社バラバラで、デジタルツールを活用する上での土台がまだ整っていないことが明らかになった。そのため、まずは、その環境を整えていきたい。その先にデジタルツールの活用の可能性が広がっていると考えている。 (佐々木副会長)  実際に利用できる読み取り方式は、何が中心になるのか。 (食品表示企画課 一条)  将来的に様々な読み取り方式も検討していかないといけないと考えており、それが昨年度実証事業に取り組んだバーコードが一番適切なのか、あるいはQRコードやRFIDという可能性もある。様々な読み取り規格の可能性があるため、そこも含めて検討していきたいと考えている。 (佐々木副会長)  現在検討中だということはわかった。ただ、QRコード等をつける際は、視覚障害者が触ってもわかるようにしていただきたい。 (食品表示企画課 一条)  今後の検討の参考にする。 (三宅部長)  今後も実証実験を続けていくとの話だが、この中に視覚障害も含め、障害当事者が参加するという機会は検討されているか。 (食品表示企画課 國分)  現状としては、実際にスーパーで買物をしている人に声をかけ、実証実験に参加いただいている。もし、そのスーパーを利用している障害当事者がいれば、実証実験に参加していただける機会はあると思う。 (三宅部長)  障害当事者も一般の人も同じように使えるスマートフォンアプリや専用機を考えて開発するならば、ぜひ、視覚障害者が参加できる機会を設けていただきたい。その際に、偶然そのスーパーに居合わせた当事者に頼んでも戸惑ってしまうので、できれば開催される所の近くの視覚障害者団体に協力依頼をしていただきたい。 (食品表示企画課 一条)  実証実験をやりたいと思っているが、コロナ禍のため開催方法も含めて検討中である。いただいた意見も参考にさせていただく。 (三宅部長)  もし、アプリを活用される際は、iPhoneでもアンドロイド系の端末でも、音声読み上げの機能や拡大表示、色反転等の標準搭載の機能を活用するということもできるので、こういった機能も使えるアプリ開発というのを念頭に置いて進めていただきたい。  また、日視連としても、アプリを開発していく段階で協力できることもあるので、お声がけいただければと思う。 (食品表示企画課 國分)  現在は、データをデジタルツールで使えるかを検討する初期の段階であり、データが整ってアプリで使えるような状態になれば、音声による読み上げ機能等が使える状態になっているはずだと思う。 (三宅部長)  実証実験は何年度まで実施するかは決まっているのか。 (食品表示企画課 國分)  令和2年度に初めて、デジタルツールを活用できるのかについて検討し始めた。令和3年度においても令和2年度の結果も踏まえて実証実験を行っていく予定である。現在、事業者にデータ管理の実態についてヒアリングを進めているが、今年度の結果を踏まえて令和4年度にどういったことをしなければならないかをブラッシュアップする予定となっている。そこから令和4年度にどういったことをするかを検討していく。 (佐々木副会長)  実証実験の結果として共用化されるのは令和5年度以降になるのか。 (食品表示企画課 國分)  現在、アプリの開発事業者等にヒアリングを進めており、どのような管理をしていて、どのようにしたらデータとして使えるのかという所も、まだ調査段階のため、もう少し時間をいただきたいと考えている。 98ページ 11 内閣府 1.陳情方法  新型コロナウイルス感染症の影響により、対面での陳情は実施できず、陳情書を郵送で提出し、書面にて回答をいただいた。 2.陳情項目、回答 (1)国が点字を文字として公的に位置付けること。 (2)行政機関から出される文書は、点字、拡大文字、メール等で送付するとともに、封筒に点字を付記するようにすること。 (3)飲食店において、誰にでも見やすい文字サイズのメニューや点字のメニューを装備するよう各事業者に指導すること。 (4)タッチパネルでの注文システムを導入している飲食店において、店員を通した注文も可能にするよう指導すること。 (内閣府 障害者施策担当)  障害者基本法において、「全て障害者は、可能な限り、言語(手話を含む。)その他の意思疎通のための手段についての選択の機会が確保されるとともに、情報の取得又は利用のための手段についての選択の機会の拡大が図られること」を旨とするとともに(第3条)、「情報の利用におけるバリアフリー化等」として必要な施策を講じること(第22条)とされています。このため、視覚に障害のある方等障害者の意思疎通を支援し、その充実を図ることは、大変重要であると考えております。  平成30年3月に策定した障害者基本計画(第4次)においては、障害者が様々な意思疎通手段を選択でき、情報へのアクセスやコミュニケーションを円滑に行えるよう、「情報アクセシビリティの向上及び意思疎通支援の充実」の項目を掲げており、点字を含め意思疎通に関する様々な施策を実施しています。同計画では、例えば次のような施策を記載しています。  ・特に障害者や障害者施策に関する情報提供及び緊急時における情報提供等を行う際の、各府省における障害の特性に応じた配慮  ・点訳等を担う人材の育成・確保、派遣  また、障害者差別解消法においても、同法に基づく基本方針や各省庁の職員向け対応要領、事業者向け対応指針において、合理的配慮の対応として、コミュニケーション、意思疎通の配慮を盛り込み、行政機関、事業者等の取り組みを促進しています。  さらには、令和3年通常国会に、事業者による合理的配慮の提供を義務化すること等を内容とする障害者差別解消法の一部改正法案を提出し、本年5月に成立したところです。このため、今後、その施行に向けて取り組んでいくこととしています。  今後とも、政府全体で障害者基本計画(第4次)に基づく施策を着実に実施するとともに、障害者差別解消法に基づく合理的配慮の提供等の社会全体での取り組みを進めてまいります。 100ページ 12 総務省 1.日時  令和3年8月24日(火) 14時00分~14時30分 2.場所  総務省 行政相談室(中央合同庁舎第2号館1階) 3.出席者 (1)日本視覚障害者団体連合                     副会長  佐々木 宗雅                    組織部長  三宅 隆                     事務局  佐藤 絵里                     事務局  石原 慎太郎 (2)総務省  大臣官房   政策評価広報課           渉外係  辻本 憲志  情報流通行政局   地上放送課              主査  東 良樹  自治行政局   選挙部選挙課         選挙第一係長  弘中 誠                  選挙第三係長  高林 豊人   住民制度課    マイナンバー制度支援室    総務事務官  松本 大介 4.陳情項目、回答、意見交換 (1)テレビの字幕の完全副音声化と視覚障害者向け解説放送の充実を図り、緊急放送や外国語の字幕や各種テロップを拡大字幕と音声とともに放送すること。 (地上放送課 東)  解説放送の充実について、総務省では平成9年度から字幕放送、解説放送、手話放送の普及目標を定める行政指針を10年ごとに作成している。直近では平成30年2月に令和9年度までの目標値を定めた「放送分野における情報アクセシビリティに関する指針」を作成している。放送事業者においては、この行政指針に基づいて解説放送の充実に向けた取り組みを進めている。なお、平成20年度以降、右肩上がりで解説放送の普及が進んでいる。加えて総務省では、解説番組を作る放送事業者に対して助成を行うことで、解説放送の充実をサポートしている。  緊急放送の拡大字幕化と音声化については、放送分野における情報アクセシビリティに関する指針において、「大規模災害時等にチャイム音とともに緊急、臨時に文字スーパーを送出する場合、できる限り読み上げる等により音声で伝えるよう努めるものとする」と記載しており、放送事業者はこれに基づいて、できる限り緊急速報を音声化するようにしている。また、放送事業者にヒアリングを行ったところ、テレビ番組放送中の緊急速報の音声化については、主に4つの対応を行っている。1つ、速報の内容が国民の生命・財産に関わる場合は、生放送中であってもその担当責任者の判断で読み上げる。2つ、録画番組であれば、番組を中断して特設ニュースを編成して対応する。3つ、緊急地震速報についてはサイン音の後に自動音声を送出して注意喚起を行う。4つ、拡大字幕については、深夜・早朝に災害等が発生した場合、表示時間の長い文字スーパー、地図スーパー、L字放送を活用して情報を確実に届ける等の取り組みを行っていると聞いている。  外国語の日本語吹き替え、及び日本語字幕の音声化については、放送番組中に外国語音声があった場合、日本語吹き替えする場合と日本語訳を字幕表示する場合の2つのパターンがあるが、放送事業者からは翻訳前の元音自体がニュースの重要な情報源となっており、視聴者からも翻訳前の発言を正確に知りたいという声も寄せられている事情があるため、字幕にするのかについては、伝達する内容によって対応している。また、字幕、日本語訳字幕の副音声化について、放送事業者に対してヒアリングを行ったところ、放送中に部分的に副音声にすることは技術的に難しいため、対応ができないとのことだった。 (佐々木副会長)  緊急速報等の字幕スーパーの音声化や解説放送については、いつごろまでに完全化できるのか、見通しはあるのか。 (地上放送課 東)  平成30年2月に策定した行政指針では、令和9年度までに7時から24時までに放送している番組の内、15%に解説放送を付けることを目標としている。 (佐々木副会長)  令和9年度までに15%というのは低いように思うが、これには理由があるのか。 (地上放送課 東)  一番の問題となっているのは、製作費等に高い費用がかかることである。解説放送は、字幕と比べ、新たに台本を作り、音声を吹き込まなければならないので、字幕番組を作るのに比べ3倍ほど費用がかかる。そのため、資金の少ない地方局を中心に解説放送を増やすことが困難となっている。  また、放送直前に台本が出来上がるということがよくあり、その後に解説放送用の台本を作ることが時間的にできないという問題もある。 (佐々木副会長)  視覚障害者の立場からすると、完全化への歩みが遅いように感じる。費用についても工夫できないか。視覚障害者が希望を持てるような目標値を立ててほしい。視覚障害者は、緊急速報の字幕スーパーだけでは、不安になるので、このことは早期に解決してほしい。 (三宅部長)  前回も同じ内容の陳情を行ったが、回答に変化がないように思える。解説放送については、来年度、中間の目標値の見直しのための研究会が開かれると聞いているので、我々の声をより反映してほしい。また、視覚障害者が希望する放送にするためには、様々な工夫をすることも大切だと思う。  例えば、映画について、テレビ放送の際に新たに台本を作成して解説放送を作っている放送局がほとんどであるが、放送の尺の問題等により、従来の解説放送の台本が使えないというような場合もあると思う。しかし、ノーカット版等のテレビ放送では、映画で使われていた解説台本を利用することもできると思う。  また、ニュース等については解説放送が増えない理由として、サラウンド放送や2か国語放送等で、他のチャンネルを占有しているために解説放送を入れられないと聞いている。特にニュースの場合、外国語音声の元音を聞きたいというニーズがあるため、視覚障害者が情報入手をできず、置き去りにされている。この点を改善するために、同時に吹き替えを行えない場合は、吹き替えの後にキャスターやナレーターが要約を説明する等ができるのではないか。  さらに、先日、民放にて声帯摘出により声の出せないアーティストへのインタビューがあり、質問に対して入力したパソコンの画面表示で答えるという内容であったが、その際、画面表示内容を解説放送として副音声で収録し、放送していた。生放送では難しいと思うが、実例として知っていただき、解説放送を1つでも多く付けるための参考としてほしい。 (2)国及び自治体の首長、議員選挙においては、関係主管選挙管理委員会の責任において、視覚障害を有する有権者に対して、点字、録音、拡大文字版の選挙公報の発行を義務付けること。 (選挙課 高林)  選挙公報について、衆議院議員、参議院議員、都道府県知事選挙では、公職選挙法167条で選挙ごとに1回発行しなければならないと明記されている。それ以外の地方選挙の選挙公報については、公職選挙法172条の2により、条例で定めるところにより、発行することができるとなっている。そのため、すべての選挙で選挙公報が発行されているわけではない。  また、選挙公報の発行には、印刷・配布等に一定の時間が必要であり、5日間で行われる市町村選挙等の短い期間で行われる選挙では対応が難しい。そのため、一部の市町村においては、各自治体の条例に基づいて発行できるものとしている。  こうした点を踏まえると、すべての選挙において点字版、デイジー版、テープ版等で選挙公報の発行を義務付けることは、困難であると考えている。他方、総務省としては、統一地方選挙の際、各都道府県選挙管理委員会に対して、視覚に障害のある方の意向に沿うよう、選挙のお知らせの点字版だけではなく、デイジー版、テープ版、拡大文字版を必要数準備するよう、要請している。引き続き、統一地方選挙の場合には、各都道府県選挙管理委員会に要請を行っていきたい。 (佐々木副会長)  選挙期間の短さが問題となっていることは承知している。直近の衆議院議員総選挙を例にすると、期間は12日で、墨字の選挙公報については、選挙期間開始から5日程度を目途に作成されている。その後に選挙のお知らせとして、拡大文字版、点字版、デイジー版等を作成しているようだが、選挙公報と並行して作成することはできないだろうか。墨字の選挙公報ができてから拡大文字版、点字版、デイジー版を作るというような決まりになっているのか。 (選挙課 高林)  市町村では、選挙期間の短さのため、選挙公報を発行していないところもある。  また、総務省から選挙公報について、墨字の選挙公報ができてから選挙のお知らせとして、拡大文字版、点字版、デイジー版作成の作業に取り掛かるようにという通知は出していない。選挙管理委員会の実質的な事務的な作業についても、この場で発言できるような情報を持っていない。ただ、指摘いただいたことができるのかは検討したい。 (三宅部長)  少数ではあるのだが、自治体によっては、拡大文字版、点字版、デイジー版の選挙のお知らせが発行されていることを知らない視覚障害者もいると聞いている。そのため、併せて拡大文字版、点字版、デイジー版を作成している場合は、その旨を周知するように総務省から自治体に通知を出してほしい。 (選挙課 高林)  各選挙管理委員会でも各個人の情報は持っていないので、拡大文字版、点字版、デイジー版の配布の際はどうしても手上げ方式になってしまう。しかし、周知については、引き続き検討する。 (3)地方自治体から出される文書は、点字、拡大文字、メール等で送付するとともに、封筒に点字を付記するよう指導すること。 (広報課 辻本)  地方自治体から発出される文書について、点字、拡大文字、メール等での送付、封筒への点字の付記については、各自治体の判断によって実施されており、総務省から地方自治体へ指導できる権限を持っていない。そのため、各自治体へ要望した方が良いと思う。  なお、総務省から発出される文章については、各部局によって配慮がなされているものと認識している。いただいた要望については引き続き省内で共有していく。 (三宅部長)  総務省からの発出文書においては引き続きお願いするが、全国の自治体に指導することは本当にできないか。全国の加盟団体からは、地元の自治体にこのようなことを相談すると、「国が動かないと自分たちは何もできない」と言われてしまう。前向きに考えてほしい。 (4)マイナンバーカードに付記する点字は正しく記載されるよう、各地方自治体に指導すること。 (住民制度課 松本)  現在、マイナンバーカードに付記する点字は仮名表記法に基づいたものとなっている。点字表記法に基づいていないことについては、マイナンバーカードを実際に発行している地方公共団体の情報システム機構に確認をしたところ、名前のフリガナを点字表記法に変換するシステムの設置は難しい状況であるとの回答だった。また申請書の中で、氏名に点字を付記するかどうかの記載があるが、その申請が出されたときにカードに転記したり、機械で読み取らせたりする方法でもマンパワーがかかる等の制約があるため、現時点では難しいとのことだった。  総務省としては、視覚障害者を含めた全ての国民にマイナンバーカードを所持してもらうことを目指しているので、今回のこの要望は、貴重なご意見として承った。 (佐々木副会長)  マイナンバーカードの点字の誤記が多いという声が多数寄せられているので、その改善として、今回このような陳情を行った。  提案としては、マイナンバーカードに限った話ではないが、点字使用者の校正を受けることや業者に委託する等はできないか。 (三宅部長)  点字の付記については、市区町村ごとに実施しているために正しく点字が付記されている市区町村とそうでない市区町村の差が出ている。この地域間格差も問題になっていることを知ってほしい。  根本的な話だが、もし、活字で誤字があった場合、誰でも嫌な印象を受けると思う。視覚障害者にとっての点字についても同じであり、実際に嫌な思いをしている。点字表記の確認自体は手間とは思えないので、改善をお願いする。 (5)スマートフォン等の新たな情報端末を視覚障害者も容易に活用できるようにするため、研修機会の充実及び指導体制の確立を含めた施策を講ずること。なお、指導員の養成は、視覚障害当事者団体等において実施する制度を確立すべきである。 (広報課 辻本)  陳情項目(5)の要望については、本日担当部局の都合がつかなかったため回答できないが、要望は担当部局にお届けする。 (三宅部長)  この要望においても、視覚障害当事者からの声が多く寄せられているので、お願いする。